仕事・人生
“有言実行”で主役掴んだ元宝塚宙組男役・悠未ひろさん 衝撃の大失敗で受けた“愛のムチ”
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インタビュアー:竹山 マユミ
「新人公演の主役をやりたい」 上級生の前でアピールして有言実行
竹山:そこから新人公演や、大劇場公演とは別の場所での公演などで抜擢されることもありました。当時はどんなお気持ちでしたか。
悠未:若い時って“根拠のない自信”みたいなものがありますよね。私はそれが特に強い方で(笑)、いろいろ緻密に考えて何かをするというよりも、これになりたいと思うことが先でした。だから、新人公演の主演をやりたい、やるんだという思いを上級生に話したのです。「私、新人公演の主役をやりたいんです」って。怖いもの知らずでしたね。
竹山:上級生はどんな反応でしたか。
悠未:本公演でも成績順の大勢口(群舞などのポジション)で、有望株を感じさせる空気もなかったですから「何言ってんの?」「それ、どこから出てきた話?」とか言われて、笑われましたね。でも私には、恥ずかしさより「有言実行するんだ」といった謎の強さみたいなものがあったと思います。そうして人に言っているうちに、少しずつそこに近づくような役がつくようになり、研7(入団7年目)で新人公演の主役をすることになりました。
竹山:先輩方もさぞ驚かれたことでしょうね。
悠未:「あなた、本当にやったね。私にはできないわ」と褒めていただきました。劇団の中には、下級生の時から“誰から見てもスター候補”という方がいます。私にはそういう感じがまったくなかったので、いろいろな方を見てこられた上級生の方からすると、私の状況だったら普通は絶対に言えないと思うでしょう。このことがあってから、『信じて言葉にして実現していくんだ』と思うようになりました。
竹山:そういう話は同期の方にするようなイメージがありますが、どうして先輩に気持ちをお伝えすることにしたのですか。
悠未:無知すぎる自分は、同期よりもいろいろな経験を積んだ上級生の方が話していて楽しかったり、得るものが多いと感じていたりしたのでしょうね。そういう時間がとても好きでした。休憩時間も上級生のところに行ってよく話を聞いたり、話したりしていました。
竹山:悠未さんがまっすぐでいらっしゃるから、上級生の皆さんもすごくかわいがってくださったのではないですか。
悠未:単独行動で、何か不思議な子とは思われていたと……。やはり下級生は同期生で固まっていることが多いのですが、そんな中でも物怖じせず上級生のところへ。でも、この時から私は本当に仲間に恵まれていたと思います。そういう風に受け入れてくださる上級生がいらっしゃって、精神的にも引っ張り上げていただいたというのがありましたから。
竹山:新人公演で主演をしたいと先輩方の前でおっしゃってから、ご自身の変化や過ごし方に変化はあったのですか。
悠未:「言ったからにはやらないと……」という気持ちは自分の中にもありました。自分に言い聞かせたいから「主役をやりたい」と上級生に言ったわけではなく、心の中の包み隠さない気持ちだったのですが、言ったことによって自分自身も「やらなければ」という気持ちになったと思います。それで頑張れたのかもしれないですね。
竹山:口に出してから、実現するために何が必要なのかいうことを考えて、しっかり実践されていたのですね。
悠未:言ってみたことによって、いろいろ気づくことがありました。これも足りない、あれも足りないと。それによって動き出すといった感じです。下級生の頃は上級生のお手伝いがあったり、稽古の準備もしたりと本当にハードでしたけれど、若さの持つエネルギーでそれをやり遂げられたのかなと思います。