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割り勘はクールじゃない オーストラリアが誇るパブの文化 現地記者が楽しみ方を解説
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南半球のオーストラリアは、これからクリスマスに向けて夏本番を迎えます。それは同時に、冷えたビールがおいしいベストシーズン。現地在住ジャーナリストの守屋太郎さんが、同国で暮らすためのノウハウなどを解説するこの連載では、前回から「オーストラリアのビール」をテーマにお届けしています。今回は、現地に根付く英国式パブの文化とその魅力についてです。
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オーストラリアン・パブの歴史と文化
オーストラリアのパブのルーツは英国やアイルランドの酒場。18世紀の植民地建設とともに各地に広まりました。どんな地方にも、中心地には大抵パブが1軒はあります。
清教徒が開拓した米国の町は教会を中心に広がっていますが、流刑植民地だったオーストラリアの町には、労働者が疲れを癒やすためのパブを起点に発展した歴史があります。当時は、旅人向けの宿泊施設や郵便局なども兼ねた複合施設でした。その名残で、現代でも「○○ホテル」という名前で、上階に宿泊施設を備えたパブが多くあります。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、保守派のキリスト教徒から禁酒を求める声が高まりました。米国のような禁酒法こそ制定されなかったものの、パブの営業時間は午後6時まで、パブ以外では飲む酒を提供してはいけないといった厳しい規制が導入されることに。
持ち帰る酒の販売がパブで可能になったのは1960年代と比較的最近で、その後、酒販店での販売も解禁されました。現代ではずいぶん規制が緩和されていますが、オーストラリアでは今でも、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで酒を買うことはできません。
またオーストラリアのパブは、長らく男性の聖域でした。州によって異なるものの、概ね1970年代の中頃までは、パブの「女人禁制」(従業員はOK)が残っていたのです。しかし今では、大都市のおしゃれな店や郊外の家族連れ向けの店などで、女性客を見かけることも珍しくありません。
そうした歴史的背景を持つパブですが、現代では職業や性別に関係なく楽しめるオープンな社交場になっています。昼間から1人で気軽に入店でき、ビールを飲みながらまるでリビングルームのようにくつろげるのが魅力でしょう。
渡航したばかりの日本人にとっては、生きた英語に触れられる“リアルな語学学校”です。オーストラリアに着いたら、まずは宿泊先に近い地元のパブに足を運んでみましょう。毎日通って常連客と友達になれば、英語上達の近道になるかもしれません。
ビリヤードやダーツ、バンドのライブ演奏、スポーツ観戦などが楽しめる他、クイズ大会や景品が当たる「ラッキードロー」といったイベントも。「ポーキー」と呼ばれる遊技機、競馬、ドッグレース、スポーツベッティング(合法なスポーツ賭博)など「小さなカジノ」としても利用できます。