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カルチャー

「触る」と「触れる」の違いとは 人と距離を取る生活に違和感のある人が読みたい一冊

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

教えてくれた人:OliviA

多様性と不干渉は表裏一体? 「分断」につながるという指摘も

人と距離を取る生活に違和感…体に触れるという行為の意味とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】
人と距離を取る生活に違和感…体に触れるという行為の意味とは(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

 また、スキンシップの側面から多様性について切り込んでいる章も面白く読みました。今、多様性やダイバーシティなどいろいろ言われていますが、多様性とは不干渉と表裏一体であり、あなたはあなた、私は私、それぞれの考え方は相容れないものだとする「分断」につながる可能性があると、伊藤さんは指摘しています。

 コロナ禍でソーシャルディスタンスという言葉が社会のスタンダードになりました。「体の接触は悪であり病気につながること」という認識が少なからず存在する現在、患者さんの体に触れるセラピストなどをされている方は、この本が仕事面でも役立ちそうです。実際、読んだ後に人への触れ方が変わった、という施術者の方もいらっしゃいました。

 セラピストなど人の体に触れる職業の方もそうですが、コロナ禍でスキンシップが減ってしまった方、人と距離を取る生活に違和感のある方など、スキンシップを見直したいと思っている方にもおすすめです。

 これまで4回にわたって私がご紹介した本は、ユーモアのあるエッセイから海外の価値観、心理療法について書かれた学術的なものまで幅広い内容になりました。その理由は、私が専門としている性にはさまざまな側面があるから。性とは心を伴うものであるからこそ、医療や比較文化、社会学などに興味や関心を持ち、それらを紐解いていかなければいけないと考えています。

◇「手の倫理」(伊藤亜紗著/講談社刊)
人が人に「さわる」「ふれる」こと。そこから生まれる交流や人間同士の関係における創造的可能性について探る一冊。筆者の伊藤亜紗さんは、東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、同大学教授(環境・社会理工学院社会・間科学コース)、リベラルアーツ研究教育院教授を務めている。

(関口 裕子)

OliviA(オリビア)

1980年生まれ。ラブライフアドバイザー(R)、アロマセラピスト、日本性科学会 会員。学生時代に「女性の性」をテーマに卒業論文を執筆したことをきっかけに、2007年より性に関する総合アドバイザーとして本格的に活動を開始。台湾でも書籍を出版するなど、日本のみならず海外にも活動の幅を広げ、多方面で「女性のセクシュアルウェルネス」「コミュニケーションを重視した性生活」の提案を行っている。近著に「セックスが本当に気持ち良くなるLOVEもみ」(日本文芸社)など。