育児・家族

認知症の父にうれしい変化 同じ質問を何度も繰り返す無限の「電話地獄」にアラフィフ娘が実践した「色」の活用法とは

著者:和栗 恵

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少しでも父の記憶を保持させるために ひらめいた工夫は「色」

 認知症の中核症状となる「記憶障害」は、本当に厄介です。これまで私自身、全く無知の分野でしたが、父の介護がきっかけで専門の方々と会う機会があれば話を聞くなどして「記憶」について調べまくり、良いと思うことは我流ですが父にやってみることにしました。

 そもそも人間の記憶には、料理の仕方や自転車の乗り方といったからだで覚える「手続き記憶」、人や地名など学習することで得た「意味記憶」、個別の体験を記憶している「エピソード記憶」があると一般的に言われています。私の父のようにアルツハイマー型認知症の場合、最近の記憶や「エピソード記憶」から失われていく傾向があるようです。

 そんな記憶のシステムについて学びながら、いろいろと調べていくと、今度は「記憶」と「色」について知る機会を得ました。なんでも、2009年に米国の大学が行った研究から、記憶は「色」と関係し、人間は「色」を付けたものを記憶しやすいことが分かっているそうです。

 たとえば、受験勉強をする際、マーカーで色を付けたり、絶対に覚えておきたい文字を青い文字で書き取りすると覚えやすいといったエピソードを聞いたことがある人、実際にやったことがある人も多いと思います。つまり、「白い紙に黒い文字で書く」よりも、色のついた紙に文字を書いたほうが、注意を引き、「大切なことなのかも!」と感じやすくなるため、記憶(「長期記憶」)に残りやすくなるというのです。

ちょっとした工夫を取り入れた張り紙でストレスが激減!

 ものは試しに……と思い、近所の100円均一に出向き、鮮やかな緑色の厚紙を用意しました。

「車は処分済みです」
「会社は昨年春にたたんでいます」

 白い紙に書いたのと同様の内容を書き、貼り替えてみました。緑色にしたのは、私の個人的見解からです。赤は攻撃色であり「短期記憶」に保存されやすいという説があるためと、国内外の精神科の病院で壁を白から緑にしたところ、症状が落ち着いたという話を耳に挟んだことがあったからです。

 張り紙を替えた翌日。ドキドキしながら仕事をしていました。しかし、父親からの電話は1度もありません。2日目。夜になって電話がありましたが、内容は「テレビのリモコンが見当たらないんだが……」というものでした。そうこうするうちに1週間。あれだけかかってきていた父からの恐怖の電話が、なんと、3日に1本ほどに減り、しかも1度も、「車が~」「仕事が~」と言わなくなったのです!!

 もちろん私の父の場合は、たまたまうまくいっただけかもしれません。しかし、同じ内容を記して紙を貼っただけなのに、緑色の紙に変えた途端に言わなくなったことは、父の記憶保存になにか意味があることだったのかもしれないと思いました。

 さっそく実家の母に電話をし、緑の紙に張り替えたら電話が激減したことを伝え、細かな注意書きなどをすべて、緑色の紙で貼り直すように伝えました。緑の張り紙に変えることで、どこまで効果を得られるかはまだわかりませんが、うちの父の場合、今のところは……とっても快調です!

 もちろんエビデンスのあることではないので、なにも保証することはできませんが、もしも私と同じように悩んでいる方がいるならばと思い、認知症の父を持つ娘の経験のひとつとして共有できたらと感じています。