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仕事・人生

宝塚退団後は「生きる屍」 元宙組男役・悠未ひろさんが再起を決意するまでの日々

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

再起のきっかけとなったGACKTさん主演の舞台のオファー

和やかなムードだった悠未さんと竹山さん【写真:荒川祐史】
和やかなムードだった悠未さんと竹山さん【写真:荒川祐史】

竹山:どうやって“生きる屍”から立ち直ったのですか。

悠未:時間はかかりましたね。私は東京出身なので、宝塚退団と同時に東京に戻るのが普通だと思いますが、何もやる気になれなくて1年くらい宝塚にいました。先に辞めた同期や上級生から「何してんの。早く東京出ておいで」と言われても「まったくそんな気になれない」と答えていました。

 でも、宙組の次の公演が始まると、当たり前ですが自分は出ることはできないし……。だから、そういう時は東京に行ったり、いろいろなところに行ったりして、気持ちを紛らわせていました。そんな中でいただいたお仕事が大きく自分を変えたのです。

竹山:どんなお仕事だったのですか。

悠未:GACKTさん主演の舞台「MOONSAGA-義経秘伝-第二章」(2014)です。GACKTさんの敵役ということで責任重大でした。“本物”の男性との立ち回りもありましたし、そんな“屍”の状態でできる役ではありません。最初は、オファーを受けるか迷いました。

 でも、その役は「男役」だったのです。宝塚の男役とはまったく違いましたが、女性役ではなく男役ならできるかもしれないと思い、お受けすることにしました。そうなると稽古で東京に行く必要がありましたし、筋トレもしないと男の人とは立ち回りもできない。心は宝塚にあるけど徐々にエンジンがかかってきて、目の前のことに精一杯になりました。そんなこともあり、住まいを引き払って宝塚を出ることになったのです。

竹山:やはり神様というのは、次のステージを用意してくださるものですね。それから徐々に、いろいろなOGの方たちとのステージや舞台なども始まっていくわけですね。

悠未:何かを始めると、物事は流れていくものだなと。それが精神的なリハビリにもなり、宝塚のOGの方と過ごす時間も多くなりました。今まであまり交流がなかった上級生がとても優しく温かく話してくださり、まるで昔から親交のある旧友だったように接していただく。そういう上級生の大きさに出会って、宝塚の素晴らしさを改めてもう一度感じさせてもらいましたし、卒業しないと味わえない幸せも感じたりしました。

竹山:素敵ですね。世代を超えても、そういう絆が伝わってくるような空気があるし、清い一線というのも感じられますね。

悠未:時代が違うとはいえ、物心のついた10代、20代から同じようなことを何十年もやって、宝塚という場所で人間形成をしてきている仲間だから、芸能界の仕事の中でまた出会っても“言葉はなくても”ですよね。