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輸出量は世界第6位 オーストラリアが誇るバラエティ豊かなワイン その魅力とは

公開日:  /  更新日:

著者:守屋 太郎

ワインの実質消費量はビールと同等に

 前回前々回で、ビールはオーストラリア人に親しまれている“国民酒”であるという話をしました。しかし、過去約50年間の長期トレンドを見ると、オーストラリアでも日本と同様に“ビール離れ”が進んでいます。一方で、ワインの消費は大幅に伸びているのです。

 オーストラリア統計局によると、1人あたりのビール消費量は最盛期の1974~1975年度が192.14リットルでしたが、2017~2018年度には87.56リットルと半分以下に減っています(前回のコラムで紹介したキリンホールディングスの統計とは、算出方法や年度が異なるので単純に比較できません)。それでも平均的な日本人の約2倍のビールを飲んでいるので、半世紀前のオーストラリア人がどれだけビールを飲んでいたのかは驚愕です。

 一方、ワインは1974~1975年度の15.12リットルから2017~2018年度には28.26リットルと2倍近くに増えました。

 依然としてビールの名目消費量がワインより多いことに変わりはありません。ところが、名目消費量をアルコール度数で割った実質の純アルコール量で比較すると、2017~2018年度はビールが3.71リットルまで減ったのに対して、ワインが3.67リットルまで増えてほぼ肩を並べています。

「食中酒」としてワイン文化が浸透

一定の格があるレストランではワインセラーの在庫の豊富さも評価の対象になる【写真:Visit Victoria】
一定の格があるレストランではワインセラーの在庫の豊富さも評価の対象になる【写真:Visit Victoria】

 ワイン消費が増えている背景には、オーストラリアでの食に対する姿勢の変化があります。前回のコラムで指摘した通り、パブでは何も食べず、ただただビールを飲み続ける人がほとんど。一方、レストランやホームパーティーでは、親しい友人や家族とゆっくりと時間を楽しみながら食事と一緒に飲むというのが、ワインの典型的な消費シーンになっています。

 フィッシュアンドチップスやミートパイといった英国式の質素な食事を継承してきたオーストラリア人ですが、近年では経済的な繁栄や移民の流入、海外旅行での異文化体験などに応じて料理が多様化。こうした食文化の変化を背景に、料理との“マリアージュ”(組み合わせ)がより楽しめる「食中酒」としてのワインの人気が高まっています。供給と需要の両面で、オーストラリアはワイン大国となったわけです。

 次回は、オーストラリア産ワインのブドウ品種や主な産地、ワイナリーめぐりなどについて解説します。

(守屋 太郎)

守屋 太郎(もりや・たろう)

1993年に渡豪。シドニーの日本語新聞社「日豪プレス」で記者、編集主幹として、同国の政治経済や2000年シドニー五輪などを取材。2007年より現地調査会社「グローバル・プロモーションズ・オーストラリア」でマーケティング・ディレクター。市場調査や日本企業支援を手がける傍ら、ジャーナリストとして活動中。