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「えびす講」は“商売繁盛”だけではない? 実は「留守神」のえびす様 感謝を捧げる意味も

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

えびす様は「留守神」とも 神無月との関係は

神々が出雲に集まる旧暦の「神無月」(写真はイメージ)【写真:写真AC】
神々が出雲に集まる旧暦の「神無月」(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 そもそもえびす様は、七福神の1人。七福神は幸福をもたらす神様とされ、一般的にはえびす様の他に、大黒(だいこく)様、毘沙門天(びしゃもんてん)様、弁財天(べんざいてん)様、福禄寿(ふくろくじゅ)様、寿老人(じゅろうじん)様、布袋(ほてい)様がいます。宝船に乗った七福神が初夢に出てくれば縁起が良いと、古くから信じられてきました。

 七福神の中で、えびす様は右手に釣り竿を持ち、左脇に大きなタイを抱えている姿が特徴です。「エビ(恵比)でタイを釣る」という語呂合わせから、商売繁盛にご利益があるといわれているとか。

 旧暦の10月は「神無月」といわれます。由来や意味には諸説あり、「無」が「の」の意味で「神の月」や文字通り「神がいない月」とも。これは全国の八百万(やおよろず)の神々が、いろいろなことを取り決めするために出雲大社(島根県出雲市大社町)に集まるという平安時代の言い伝えが由来しているようです。ちなみに、神様が集まる出雲では10月を「神在月(かみありづき)」と呼ぶこともあります。

 ただし、この時期、出雲以外の各地に神様がまったくいなくなるのではありません。集まりに参加せず留守番をする神様がいます。それがえびす様です。居残って留守を預かり、人々の暮らしを見守っているといわれてきました。「えびす講」は、「留守神」として奮闘するえびす様を慰め、感謝するために始まったとの説もあります。

 多くのご利益や恵みをもたらしてくれる、身近で親しみのあるえびす様。お住まいの地域で「えびす講」という文字を見かけたら、自分の祈願だけではなく、感謝の気持ちを伝えに行くのも良いかもしれません。

【参考】
「日本のしきたりがまるごとわかる本」(晋遊舎)
「眠れなくなるほど面白い 図解 日本のしきたり」千葉公慈監修(日本文芸社)
国立国会図書館ホームページ「日本の暦」
https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s8.html

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu