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からだ・美容

元SKE矢方美紀さんが知った乳がん治療の複雑さ 「同じ病気なのに分からない、すごく不思議」

公開日:  /  更新日:

著者:島田 みゆ

普段の生活で説明しなければならないシーンも

――術後、動きに支障はあるのですか?

島田:私の場合、利き腕側の右胸を全摘していて、術後しばらくは動かしづらかったくらいで今はほとんど支障ありません。私はリンパ節切除をしていなくて、利き腕かどうかよりリンパ節を取ったか取らないかで影響するような気がします。

矢方:私は左胸でリンパ節切除をしたのですが、はじめは手のひらをグーパーするのもやっとでした。術後1週間は髪も洗えなくて、看護師さんや友達に手伝ってもらったりしていました。

 また、リュックサックは背負えないので、左側にかからない斜めがけバックを使っていました。基本的に左側を圧迫しないように言われているので、今も採血や血圧測定、注射も左はNGです。普段の生活で説明しなければならないことはあります。

「乳がんは胸の病気だと」 治療して知った複雑さ

――罹患前と後で、乳がんの知識やイメージと違ったことはありますか?

矢方:乳がんになるまでは、こんなにいろんな治療があることも知らなかったですし、罹患した方と話していても知らない治療、薬を使っていたりすることもあって、同じ病気なのに分からない、すごく不思議な病気だなと感じました。

 また、乳がんは胸の病気だと思っていたので、抗がん剤やホルモン治療が必要で、それによって生理が止まるといったことにまで影響してくるとは知りませんでした。私は2018年に抗がん剤治療をして、その後にホルモン療法の注射をしているので今も生理は来ていません。

島田:私も抗がん剤治療以降、今はホルモン療法もしているので、生理は止まっています。私の場合、年齢的にホルモン療法を終えた5年後には、早期閉経になる可能性もあると言われています。

 罹患する前は、乳がんの病状や治療法がここまで人によって違うとは知りませんでした。サブタイプがあって、それによって治療法や薬は変わって、抗がん剤を使う・使わない、術前にするのか術後にするのかも本当に人それぞれ。

 また、命にかかわる深刻な状況か、そこまでではない軽い状況なのか……同じ乳がんであっても状況はさまざまです。罹患者同士で共感できるところはたくさんありますがまったく違うこともあって、想像以上に複雑だと感じています。

◇矢方美紀(やかた・みき)
1992年、大分県生まれ。17歳で名古屋を拠点に活動するアイドルグループ・SKE48の第3期メンバーオーディションに合格しデビュー。2017年、グループ卒業。翌2018年1月、25歳で乳がんの告知を受け、左乳房全摘出・リンパ節切除。現在は「自身の体を知る」ことの重要性や、がんになっても夢を諦めない姿を伝えている。テレビやラジオ出演・ナレーション・MC・講演会の他、声優としても活躍中。

(島田 みゆ)

島田 みゆ(しまだ・みゆ)

1983年生まれ。社会人教育関係の会社で企画編集として11年勤めたのち、旅や食分野のライター、ヨガ講師、海外ツアーコンダクターの複業フリーランスに。コロナ禍で旅行の仕事が休業状態になり、好きな旅行ができないのであればと2022年からの海外生活を見据えていた矢先、38歳で乳がんが判明。3月に右胸全摘出手術を終え、現在も治療を続けながら、自身の経験を踏まえて多くの女性の心と体を健康に役立つ発信・活動をしたいと考えている。
ツイッター:@myuu_works
note:島田みゆ | 取材ライター×ヨガ講師×海外ツアコン