Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

どうぶつ

お迎え先でトイレ訓練 愛猫が切ない鳴き声を上げた理由とは ドイツで猫を飼う体験記

公開日:  /  更新日:

著者:島崎 英純

探し求めていた形の猫用トイレに出会う

 猫トイレを購入する際はトイレの形状に悩みました。日本で猫と暮らしていた時、猫砂から発生する粉塵に悩まされた経験があり、猫が用を足したものを隠すために砂をかく時に、できるだけ外へ飛び出さない形のトイレはないかなぁと探していたのです。

 ドイツのペットショップやインターネット通販で細密に調べた結果、行き着いたのは高さがあり、一部分にフタができ、猫が上から入れる縦型のトイレでした。ただ、実際にこれで用を足してくれるのかは分からないので、まずは猫たちの動向を観察しなければなりません。

上に入り口がある縦型の猫用トイレ。ココロが覗き込んで確認【写真:島崎英純】
上に入り口がある縦型の猫用トイレ。ココロが覗き込んで確認【写真:島崎英純】

 また、猫砂の種類にも気を配りました。最初は譲り受けた農家の奥様にいただいたものを使用していたのですが、これがかなり粉塵の舞う代物。熟慮の上で再購入しなければならないと思いました。そして、ドイツでの猫飼いの先輩である友人女性から助言を受け、粘土の一種の鉱物を素材としたものを選択しました。

 実は、この猫砂には猫の健康に配慮された香料が含まれていて、僕が購入したものはベビーパウダーの香りがするもの。また粉塵についても製造過程で極力除去された状態で出荷しているとのことで、実際に使用したところ、ほとんど室内に舞うことがありませんでした。

 その前に、まずは猫たちにトイレのしつけをしなければなりません。農家の奥様は「生後3か月ですでに猫用トイレで用を足していたから、新居でも大丈夫よ」とお墨付きを受けていたのですが、それでもやはり心配です。特に住環境が突如変わった猫たちにとっては、ストレスを感じる時間が長いでしょうし、僕のような“新参者”がそばにいる状況では落ち着いてトイレができないかもしれません。

猫砂の匂いに反応したサツキに異変が

 そんな心配を尻目に、ココロはフンフンと鼻歌を歌っているかのように猫用トイレへ。用を足すとしっかり砂をかき、「ああ、すっきりした!」とばかりに勢い良くトイレから飛び出してきました。やっぱりこの子は物怖じしない、開けっぴろげな性格です。

 懸念はサツキの方です。そこで、農家の奥様からもらった使用済の猫砂を新設トイレにまいてみました。以前使用した猫砂を入れておくと、そこが新しいトイレだと認識してくれることはこれまでの経験からも分かっていたので、これでサツキをトイレに誘ってみようと思ったのです。

 サツキはトイレへと近づき、猫砂の匂いを嗅いだ瞬間、か細く小さな鳴き声を漏らしました。すると異変を察したココロがサツキに近づき、舐めながら慰めます。サツキはこの後1時間以上もの間、鳴くことをやめませんでした。

 農家の奥様からいただいた猫砂には、ココロやサツキのものだけでなく、生まれてからともに過ごしてきたきょうだいたち、そして母親の匂いが含まれていたのでしょう。サツキはどこかにお母さんやきょうだいたちがいるのを感じ、寂しく心細い感情を抑え切れなくなってしまったのかもしれません。

 目を伏せて嗚咽するサツキに優しく寄り添うココロ。この“2人”の姿を見て、僕は今一度、心の内に、彼らとお互いに支え、支えられ合いながら共生していく覚悟を決めたのでした。

(島崎 英純)

島崎 英純(しまざき・ひでずみ)

1970年生まれ。2001年7月から2006年7月までサッカー専門誌「週刊サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画出版社刊)編集部に勤務し、Jリーグ「浦和レッドダイヤモンズ」を5年間担当。2006年8月にフリーライターとして独立。2018年3月からはドイツに拠点を移してヨーロッパのサッカーシーンを中心に取材活動を展開。子どもの頃は家庭で動物とふれあう環境がなかったが、三十路を越えた時期に突如1匹の猫と出会って大の動物好きに。ちなみに犬も大好きで、ドイツの公共交通機関やカフェ、レストランで犬とともに行動する方々の姿を見て感銘を受け、犬との共生も夢見ている。