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漫画

犬猫の保護施設や預かりボランティアって何? 元職員が漫画通して伝えたいこと

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

tamtamさんと“ホゴイヌ”のボス【画像提供:世界文化社】
tamtamさんと“ホゴイヌ”のボス【画像提供:世界文化社】

 10年にわたる保護活動で出会った犬猫たちの思い出を漫画に綴り、SNSで人気を集めているtamtamさん。10月に出版した初の単行本「たまさんちのホゴイヌ」(世界文化社刊)も好評を博しています。作品に描かれている通り、tamtamさんが保護施設で働くことを決めたきっかけは、たった2週間でこの世を去ってしまった1匹のねこ。目の前の命と向き合いたいと公益財団法人の保護施設で働いた後、現在は2人の小さな子どもたちを育てながら、自宅で一時預かりのボランティアとして活動中です。そんなtamtamさんに、保護活動を通して知ったことや感じたことについてお話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

最初は反対していた家族 今では一番応援してくれる存在に

――保護施設で働くと決められた時のご家族の反応は?

 保護施設で働くと決めた時、家族は「保護団体」=怪しい宗教と思っていたようで(笑)止められました。そのためもちろん在職中も、賛成してくれることもありませんでした。けれどもSNSの発信をきっかけに、私の伝えたいことが分かってきたようで……今では、誰よりも私の活動を応援し、支えてくれます。

――保護施設で働いて良かったことは?

 保護施設では(相談や施設見学などの)受付をさせていただき、本当に多くの人たちと関わることができました。「大切な家族として迎えたい」と、熱意のあるご家族が来たかと思えば、その数分後には別のご家族から「引越しがあるから手放したい……」なんて相談の電話を取ることも日常茶飯事でした。

 人はなぜ手放すのか、なぜ迎えるのか……。いろんなことを考えていました。悩むことこそ多かったですが、犬猫に囲まれて仕事ができること、そして巣立った犬猫たちが元気に暮らしている。幸せに暮らしている。その事実が何よりやりがいにつながっていたような気がします。

「捨てられて良かったやん!!」と笑顔で送り出せる……第二の人生(犬生)のスタートを見守れることの喜びは大いにありました。本来であれば“捨てられることのない社会”を作っていきたいですけどね……。

――逆に大変だったことは?

 やはり病気や死に接する機会が多かったことですね。私が働いていたのは大きな施設だったので、犬猫が常時500頭以上いました。シニアも多かったので、1週間に数頭は必ず見送っていましたね。また、乳飲み子の子猫は生存率が低いのですが、繁殖シーズンになるとものすごく多くやってきました。そうした子猫たちが自分の手の中で力尽きることも多かったです。

――保護施設でのご経験を通して、どのような資質が必要だと思いますか?

 動物が好きであることはもちろんですが、“好き”だけではやっていけない部分も多いです。なので、「癒やされること」よりも「癒やしてあげる」ことを優先できる人が向いていると思います。そうすればおのずと、必要な経験は後から動物たちに教わります。

保護犬は教えてあげさえすれば「可能性は無限大」

――現在は預かりボランティアをされていますが、保護施設職員からボランティアに切り替えた理由はあるのでしょうか?

 実はボランティアをしている自覚があまりなくて……。自分ができることだけをやっている……という感覚なんです。保護施設で勤務したことによって、日本の動物福祉や犬猫の殺処分を減らしたいとより強く思うようになりました。

――一時預かりボランティアをしていて感じることは?

 保護施設では多くの犬猫が保護されますが、譲渡率は保護数に比べて圧倒的に低いです。その上、多くの犬猫がいるという事実は、その中で「譲渡されやすい子」と「譲渡されにくい子」にどうしても分かれてしまうことでもあります。

 例えば怖がりで、人を信用していない野犬と、人が大好きで人懐っこい犬、一般的に迎えられやすいのは……もちろん分かりますよね。そういう現場を多く見てきたのです。チャンスは遠く、施設だけで年老いてしまう子もいました。「もったいない!」と思うんです。家庭、家族、人間のこと……教えてあげさえすれば、伸び代は無限にありますからね。

 だからこそ、自分で保護した時は必ず家庭で、リビングでお世話しようと決めていたんです。それを貫いた結果が個人ボランティア……となるのでしょうね。

――預かりボランティアには、ご家族の協力はあったのでしょうか?

 預かりボランティアを始める時、夫の反応は「好きにしたら……」という感じでした。そのため、“一緒に暮らしている家族を里子に出す”という感覚が夫には理解できないと思っていたんです。しかし、譲渡が続いていく中、里親の元に行った子たちの幸せそうな近況報告をもらう度、喜びに変わり、命がつながっていく意味を理解してくれたような気がします。