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変化の中で見つける“変わらないもの” 米国在住日本人女性が考える豊かな食生活

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

地元の食材を生かして日本食に欠かせない梅干しや調味料作り

アンズとハイビスカスで作る梅干し(アンズ干し)【写真:小田島勢子】
アンズとハイビスカスで作る梅干し(アンズ干し)【写真:小田島勢子】

 例えば私の場合、住む国は違えど、慣れ親しんだ日本の味や料理は欠かせない生活のベースになっています。そこで米はカリフォルニア米を使い、たまにキヌアやその他の豆類、穀物を混ぜて炊き合わせながら日々の主食にしています。また、米国内産の大豆や米、麹などを使い、みりん、しょうゆ、みそなどの調味料も作っています。(編集部注:日本ではみりん製造には酒取り扱いの免許が必要です)

 梅干しはカリフォルニア産の新鮮なアンズと食用のハイビスカスを使い、子どもが大好きなふりかけはチアシードやフラックスシード、ヘンプシードを混ぜ天日塩で味付けしたものを。おひたしなどはレモンとしょうゆとメープルシロップで作ったポン酢を使い、ホウレン草やケール、チャードなど身近な食材をさっと湯通しして作ります。

 米国では魚は基本的にサーモンが手に入りやすく、塩麹でマリネして塩ジャケにすることもあります。私自身作るのが好きなこと、基本的に家にいることもあり、我が家ではこんな風に比較的手に入りやすい米国内産のものを使い、発酵や保存できる形にして日本食を楽むようになりました。

 国内産や地元で手に入れやすいものを使うことの大きな利点は、生鮮食品に新鮮なものが多いこと、時季にあった旬の食材が一番おいしい状態で手に入ること、そして収穫の多い時期には価格帯が他の時季と比べると高くない傾向にあることです。購入する私たちにとっても、食する家族にとってもうれしいことだと思っています。

「満たされているのを意識すること」 近いところで豊かさを感じるコツ

近くのトレイルや山の中で採れたエルダベリー、ワイルドローズの実はシロップに【写真:小田島勢子】
近くのトレイルや山の中で採れたエルダベリー、ワイルドローズの実はシロップに【写真:小田島勢子】

 忙しい現代社会では、誰もが家にいる時間が長いわけではなく、気に入った食材を使い一から調味料や料理を作ることはとても難しいことだと思います。ほんの少しずつ、身近なところから。例えば毎日食するお米から、お塩から、大好きな農家さんやブランドを応援する気持ちで商品を購入することで、満たされた気持ちになるかもしれません。

 土地や環境が違えば、手に入るものや食習慣も違うもの。同じ国でも、生活スタイルが違えばそれも然り。自分の心地よいものを知ること。そして、人も食も環境も、自分の中に知らず知らずできていた枠に気づき、少しずつその枠を外していくような感覚で過ごすこと。これらを実践できれば、実はとても近いところに豊かさを感じられるかもしれません。

 水も緑も季節も豊かな日本。心の距離も物理的な距離も近くに感じられるものに目を向けて、心も食材も、満たしにいくのではなく、満たされていることを意識してみるといつもと違った変化があるかもしれません。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/