からだ・美容
髪はなぜ薄くなる? 若年層の薄毛は生活習慣の乱れが原因の場合も 最新治療を医師が解説
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教えてくれた人:佐藤 卓士
お風呂上がりに排水口を見てぎょっとした、床に落ちている髪の毛が増えた……。これってもしかして薄毛のサイン!? と、心配になることありませんか。薄毛、抜け毛の悩みは男女ともに深刻なものです。気になっているけれど、正解がどうも分からないという健康や美容の疑問を医師が解説する連載。今回は「薄毛」がテーマです。髪が抜ける原因や、薄毛の予防、治療について佐藤卓士医師に伺いました。
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1日50~100本は自然に抜けるもの
シャンプーをしていると指に髪がたくさん絡まり、ごっそり抜けた! と驚く人もいますが、過剰に心配する必要はありません。
髪には生えて抜け落ち、再び生えてくるヘアサイクル(毛周期)があり、1日に50~100本は自然に抜け落ちているのです。シャンプーをすると頭皮に摩擦が起き、寿命を迎えた毛が抜け落ちやすいので、大量に髪が抜けたと感じてしまいます。
このヘアサイクルには、毛乳頭で毛母細胞が分裂・増殖して髪が太く長く伸びる「成長期」(2~6年)、毛乳頭が退縮し始め髪の成長が遅くなる「退行期」(2~3週間)、毛乳頭の活動が休止し成長が完全に止まる「休止期」(2~3か月)があります。休止期を迎えると、成長が止まった髪の毛は脱毛して新たに生え変わります。
成長期が長ければ長いほど髪は伸びますし、短いと成長しきれず細く短い髪になり、ボリュームのないヘアに。また、休止期が長くなると新しい髪が生えないので薄毛が目立ってきます。短くてか弱い髪が抜けるようになったら、ヘアサイクルが乱れているサイン。
加齢、遺伝、ホルモンバランスの乱れにより毛周期が乱れる
毛乳頭の働きが衰え、ヘアサイクルが乱れる原因は、主に加齢、ホルモンバランスの乱れ、遺伝が考えられます。
女性の場合は、更年期を迎えると肌や髪の新陳代謝を促していた女性ホルモン「エストロゲン」が減るため、髪に元気がなくなっていきます。女性ホルモンの分泌が少なくなり、男性ホルモンの影響を受けるため、髪の成長スピードも遅くなっていきます。
また、出産後、髪がごそっと抜けたという経験をした人も多いと思います。それは、妊娠中に女性ホルモンが増え、出産後は急激に減るためです。産後の不規則な生活も加わり、ヘアサイクルが乱れ、抜け毛が増えるといわれています。これは一時的なことなので、ホルモンバランスが整えば、正常に戻るでしょう。
男性の薄毛に多いAGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンのテストステロンが5αリダクターゼという酵素と結合し、AGAの原因であるジヒドロテストステロンに変換されて、毛乳頭細胞の中で髪の成長を遅らせることが原因です。遺伝によって発症する可能性が高いと考えられています。
若い世代の薄毛は、睡眠不足、ダイエット、ストレスが主な原因
20代で髪に元気がない、薄くなってきたと感じる人は、遺伝、ストレス、生活習慣の乱れ、過度のダイエット、睡眠不足などが考えられます。
髪の成長にも必要な「成長ホルモン」は深い眠りについた時に分泌されます。また、午後10時~午前2時に分泌量が多くなるので、睡眠不足は髪にとって悪影響を及ぼします。自律神経も乱れ、血行不良にもなりますので、頭皮に十分な栄養が行き渡らなくなります。
栄養面でいえば、過剰な食事制限をするダイエットもNGです。栄養が足りないことも問題ですが、ジャンクフードなど脂っこい食事ばかりでも栄養不足になるので、偏りのない食事を心がけましょう。
髪の主な成分であるタンパク質をはじめ、ビタミンやミネラルは必須。鉄分、亜鉛も髪の成長には必要です。食事から摂ることが大切ですが、不足しがちなビタミン、鉄分、亜鉛はサプリメントを活用するのもいいでしょう。貧血で髪が抜けやすくなっている人もいますので、積極的に鉄分を補ってあげることが大切です。
遺伝による薄毛であっても、生活習慣、食事に気をつけることで進行を少しでも遅らせることが期待できます。