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英国はクリスマスの準備が早い? デコレーションとクリスマスシーズンの過ごし方
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クリスマスのもとになった奇跡の逸話には2バージョンが
西暦200年後半に生まれたセント・ニコラスは、小アジア(現在のトルコの辺り)で大主教を務めた人物で、裕福な家に生まれましたがその財を惜しみなく貧しい人に分け与えたといわれています。
聖人と呼ばれる人には奇跡の逸話がつきものですが、彼にまつわる話の一つがクリスマスプレゼントの習慣につながります。町を歩いている時に貧しい家から漏れ聞こえた「3人の年頃の娘たちをこれ以上養うことができないし、持参金も用意できないから嫁にも出せない。明日、奴隷市場で売ってしまうしかない」(当時のこの地方では結婚の際に持参金を持つ風習だった)という会話に心を痛めたセント・ニコラスは、娘たち一人ひとりの持参金となるよう金の入った袋を3つ、家に投げ入れたといわれています。
面白いのはここで逸話に2つのバージョンがあること。一つは袋を窓から投げ入れたという話で、これが伝わるドイツやオランダでは今でもプレゼントを入れるのは「靴」なのです。これらの国には12月6日に聖人の祝日としての「セント・ニコラス・デー」があり、ドイツでは子どもたちは枕元に、オランダでは窓枠に靴(昔は木靴)を置いておき、親がそこにお菓子を入れる風習が今も続いています。
一方、もう一つのバージョンでは袋が煙突から投げ入れられ、暖炉脇に干していた娘たちの長靴下にすっぽり入ります。この話が伝わる英国では、クリスマスに用意するのはあくまでも長靴下。オランダ移民の多い米国のようにクリスマスのお菓子が赤い長靴のパッケージで売られるのに対し、英国ではお菓子もデコレーションもあくまで靴下なのはそのためです。日本は米国文化の影響が強いのか、お菓子の詰め合わせなどは長靴が多いように見受けられます。
ちなみにこのセント・ニコラスは元々白い装束、その後、青の服でも描かれました。有名な話ですが、赤い服と「サンタクロース」の名前は両方とも米国から始まりました。「サンタクロース」という名前は米国に移民したオランダ人たちによるオランダ語読みの「シンタ・クラウス」から、赤い服はコカ・コーラ社が自社の宣伝で赤く描いたからだといわれています。
サンタクロースではなく、「ファーザー・クリスマス」の理由
しかし、英国ではまったく別の「ファーザー・クリスマス」という呼び方が伝統的です。これはキリスト教以前の英国土着の宗教に由来します。
キリスト教伝来以前に祝われたゲルマン民族の冬のお祭りは、オーディンという神々の父のお祭りであり、白いヒゲと先のとがった帽子をかぶって描かれる彼はその時期「Yule Father(ユール・ファーザー/クリスマスの父)」と呼ばれました。また、サクソン族の宗教には冬のお祭りで「ファーザー・タイム」と呼ばれるキャラクターもいます。
それらが融合し、パーティーなどで男性が白い付けヒゲで余興をする風習が始まり、キリスト教に置き換わった後、16世紀から「ファーザー・クリスマス」と呼ばれるようになったのです。これらの宗教は数世紀英国で混在し、いつしか一体となって現在の「ファーザー・クリスマス」=サンタクロースになったといわれています。