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どうぶつ

ドイツの猫も“脱走”する! 現地で飼育する日本人男性の心臓バクバク体験

公開日:  /  更新日:

著者:島崎 英純

虫除け網を張って準備万端だったはずが…

 ココロとサツキを我が家に迎えたのは8月初めの頃で、まさに盛夏の時期でした。今年のドイツは連日の酷暑で、35度前後まで気温が上昇する日も。エアコン設備のない我が家(ドイツの住居の大半はエアコンが設置されていません)では、窓を開けなければ灼熱の場と化してしまうため、各部屋の窓を一時的に全開にする必要がありました。

 窓を開けると、猫たちは一目散に窓際へ向かいます。彼らの興味は外からそよぐ風とさまざまに移り変わる景色、そしてそこに息づく生き物たちです。特にハトなどの鳥の動きには興味津々で、2匹同時に同じ方向へ視線を移して、その一挙手一投足を観察しています。

 最初は周囲の様子をうかがっているだけでした。でも、猫たちがそれだけで我慢できるはずもありません。次第に対象物に手出ししようとにじり寄り、虫除け網をガリガリと爪でこするようになってしまいました。そして最終的には網を駆け上がってぶら下がり、ガシガシと激しく揺らしています。ああ、やっぱりこれでは網がもたない……。

猫との共生に対策と工夫を実感

 そして、最悪の事態が発生してしまいました。僕はある日、料理をしようとキッチンスペースへ移動した数分間、窓を開放したままリビングルームに猫たちを置き去りにしたことを失念してしまったのです。

 リビングへ戻ると、窓際が何だかユラユラと揺れています。網が完全に外れて、窓の外に張り出している屋根の上には何だかこんもりとした物体が……その正体はサツキ。日向ぼっこをしながら、のんきに香箱座りしていました。

 心臓をバクバクさせながら、できるだけサツキを驚かさないようにそっとにじり寄ったら、屋根伝いの彼方にココロの姿が! 少し目を離した隙に、2匹とも外に出てしまっていたのです。

 まずはサツキをそっと抱き寄せてリビングから寝室に誘導し、無事に確保。手強いのはココロの方で、好奇心旺盛な性格ゆえどんなに優しく声がけしても、こちらに見向きもしません。僕の部屋は5階建てアパートメントの最上階で、屋根から地面までは20メートル近くの高さがあるので、落ちたらひとたまりもありません。そこで僕は、チューブ型おやつでおびき寄せる作戦に出ました。

「おーい、ココロさ~ん。こっち! こっち!」

 半ば哀願するようにチューブ型おやつを握り締めた手をバタつかせると、こちらに視線を向けたココロが破顔一笑で(そう見えました)走り寄り、僕の腕にガシッと絡み付きました。

 そうしてココロを部屋の中に入れることにも成功。僕はすべての愛猫を確保した瞬間に膝から崩れ落ちて、リビングの床に突っ伏しました。同居を始めて数日で猫たちに脱走され、屋根から落ちようものならば一大事。猫の脱走防止策は真剣に再考しなければなりません。猫たちとの共生においては、さまざまな試行錯誤と対策、工夫が必要なのだと実感した次第です。

(島崎 英純)

島崎 英純(しまざき・ひでずみ)

1970年生まれ。2001年7月から2006年7月までサッカー専門誌「週刊サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画出版社刊)編集部に勤務し、Jリーグ「浦和レッドダイヤモンズ」を5年間担当。2006年8月にフリーライターとして独立。2018年3月からはドイツに拠点を移してヨーロッパのサッカーシーンを中心に取材活動を展開。子どもの頃は家庭で動物とふれあう環境がなかったが、三十路を越えた時期に突如1匹の猫と出会って大の動物好きに。ちなみに犬も大好きで、ドイツの公共交通機関やカフェ、レストランで犬とともに行動する方々の姿を見て感銘を受け、犬との共生も夢見ている。