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「ほぼカニ」個性的な名前を決めたのは社長だった カニカマ界でナンバー1の理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

何とか発売にこぎつけるも発売当初は苦戦続き

発売当初は木をイメージしたパッケージ。個性的な名前と大きな注意書きが話題に【写真提供:カネテツデリカフーズ】
発売当初は木をイメージしたパッケージ。個性的な名前と大きな注意書きが話題に【写真提供:カネテツデリカフーズ】

 努力の末に生まれた「ほぼカニ」。しかし発売当初は、売り上げが思うように伸びませんでした。

「3月の新発売に向け、1月にはスーパーマーケットなどで商談を行うのですが、開発が間に合わずバイヤーさんに実物を召し上がってもらうことができなかったんです。チラシのみで告知を行っていたため、発売当初は思うように注文が入らず苦戦続きでした」(荒井さん)

 しかし、その後間もなく転機が。ユニークな商品名やパッケージがSNSで話題になり、「ネーミングセンスでつい買ってしまいましたw」「190円でカニ気分なら安いもんです」など、大反響を呼びました。そして、連日のように名前が上がって、情報の輪が広がっていたのです。予想外の売れ行きに夏を迎える頃には品薄状態になり、9月から放送しようと用意したCMが放送されることはほとんどありませんでした。

 商品名候補には「ZY(ズワイ)」や「でもカニ」、「なんかカニ」、「カニゴールド」などさまざまあったそうですが、インパクトの大きい「ほぼカニ」を強く選んだのは、村上健社長(現会長)だったそうです。

「慎重派も多く、『ほぼカニ』はふざけていると言われるのではないかといった心配の声も。けれどもこの名前のおかげで、本物と誤解がないようパッケージに大きく入れた『※カニではありません』という注意書きが、予想外に注目を集めたんです」(加藤さん)

おいしさだけでなく消費者同士のコミュニケーションを提供

 そしてこのことが、ほぼカニが他の類似商品とは一線を画す特徴にもなりました。

「『ほぼカニ』は商品名を含めてコミュニケーションなんです。消費者同士のコミュニケーションのきっかけになるもの。ネットでお客様の声を拾っていると、本物に見せかけて食卓に出した、という風に楽しんでいただいています。家族のコミュニケーションや楽しさを提供していけるエモーショナルな商品になっていると思います」(加藤さん)

 日本の伝統食品である練り物は、業界全体としての売り上げが右肩下がり。しかし、「ほぼカニ」シリーズは20代や子どもにも面白いと受け、新しい世代のユーザーに刺さったことで、売り上げが年々増え続けました。今では発売当初の5倍になったそうです。

「人口は減っていますし、ここまで毎年上がり続けていく商品は弊社で他にありません。もちろんコロナ禍で内食が増えた影響もあり、2023年以降は反動減も予想されます。また、原料高騰なども続きますが、そうした今だからこそ本物のカニではなく『ほぼカニ』を活用していただければと思います」(加藤さん)

 後編は「ほぼカニ」シリーズの人気を不動にしたテレビ番組「芸能人格付けチェック」(テレビ朝日系)の裏側や、カネテツデリカフーズの目指す未来についてお届けします。

(Hint-Pot編集部)