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「格付け」で話題の「ほぼシリーズ」 目指す食課題へのアプローチ 水産物保全への取り組みとは
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「ほぼシリーズ」にはアレルギー食としての需要が
これまでカニだけでなく、ホタテやウナギ、イクラなどといった高級食材の代替品を提供してきた同社。イカは発売後すぐに完売したものの、本物のイカはまだ比較的安価で家庭でも手に入りやすい食材のため、現状は業務用としてのみ開発を続けているそうです。
「『だいたいイカ』も他商品同様、すごく好意的な評価をいただきました。特にうれしかったのは、アレルギーに対応していることを喜ぶ声ですね。『だいたいイカ』は原料にイカを使用せず再現。3月に発売した『ほぼいくら』は魚卵成分を含まない商品作りを行った結果、アレルギーをお持ちの方も家族と一緒に食べられると多くの喜びの声をいただきました。こうした声を受けて、『ほぼシリーズ』が目指すのは食課題の解決、お客様のお困り事に寄り添うことだと強く思うようになりました」(加藤さん)
2016年に発売した「ほぼエビフライ」は甲殻類アレルギーに配慮し、原料にエビを使用せずに開発。見た目を似せるにはまだまだ試行錯誤が必要ですが、味には確かな自信が持てたそうです。またその翌年の2017年には、切り口までカキそっくりにこだわった「ほぼカキフライ」を発売。こちらは、魚のすり身にカキの磯臭さをつけるため、アオサやキノコを合わせました。
「『ほぼカキフライ』は秋冬限定商品です。今年からタルタルソースが付いて、より手軽に食べやすくなりました。カキはあたる可能性があるので、私たちと同じ食品メーカーで働く方など職業上の理由や、体質上食べられないという方にも楽しんでいただきたいという思いも込められています」(荒井さん)
他には、商品化の要望が最多だった「ほぼうなぎ」も。ウナギは年々漁獲高が減り、絶滅が危惧されています。「土用の丑の日」など日本の食文化に欠かせないウナギを次世代に継承するためにも、一切ウナギを使わない「完全ウナギフリー」を実現したそうです。
限りある水産資源を守るには カネテツデリカフーズの取り組み
同社が目指すのはアレルギー問題の解決だけではありません。海の恵みを生かす企業として、水産資源の保全にも力を入れています。
「現在、世界的に水産物の需要が増加しています。前述した開発部の『ほぼ乱獲コンテスト』という名前には、そうした現実へ意識を向け、アイデアを乱獲することで水産物を守る新たな商品を開発したいという思いも込められています」(加藤さん)
同社では魚のすり身を使用していますが、将来的には大豆肉など植物性原料を使用したり、豊富な海藻を活用したりと、限りある水産資源を守るためのさまざまなアイデアが常に議論されています。
また、原材料や燃料費などの値上がりで、魚の価格も例に漏れずどんどん高騰。サーモンなどなじみ深い魚も海外からの輸入量が減少しているそうです。
2022年12月25日からは「ほぼ毛ガニ」を販売し、「ほぼズワイガニ」と「ほぼタラバガニ」とで“三つ巴の販売競争”をしているという同社。「ほぼか、ほぼ以外か」など、印象的なキャッチコピーやちょっと笑ってしまうフレーズなど、おいしさ以外にも面白い企画で消費者の心を掴みます。そうすることで、おいしく楽しく、気づかないうちに環境に良いことをしているというサイクルを作り出しているのです。
(Hint-Pot編集部)