仕事・人生
福祉ネイルのボランティア団体代表 「誰もが年を取ることが楽しみになる社会」への思い
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ボランティアを始めて日々がより楽しくなった
高齢者などに施術する際、心がけていることはあるのでしょうか。
「メンバーの中に介護施設での勤務経験がある人、ヘルパーの資格を持っている人がいるので、基本的なことは定期的に勉強会を開いて他のメンバーにレクチャーしてもらっています。
施術する相手の方との距離は近すぎてはいけないとは言われているのですが、ネイルケアを通しておしゃべりする時は、一種のお友達のような感覚で会話をします。そうすると施術中にお気持ちが若返るようで、子どもの頃や学生時代の話などをされ、互いの距離が近くなる印象です。
介護の専門家ではないのですから、マニュアルはちょっと横に置いておき、時には友達である、そういう感覚を大事にしながら誠意を持って、自分の家族に接するような気持ちで施術することを心がけています」
以前の松本さんは週5日勤務していましたが、現在は週3日に減らし「ガンチー」の活動に力を入れています。この活動を始めて、生活面で変わったことは他にもあったのでしょうか。
「それまでは、結婚して子どもがおらず、仕事をしながら、休日は友達と出かけて遊んだりする生活。テンションが上がることもありますが、年を重ねていくとそれも減っていくのかなと思っていました。この活動を始めてからは、人から感謝されたり、賞をいただいたりというように、楽しみながら仲間と頑張っていることが評価される。それがやりがいにつながり、日々がより楽しくなりました」
将来は法人化して幅広い依頼に応えたい
これからもますますの充実を目指す松本さん。今後は幅広く対応できる体制を目指し、法人化も視野に入れているそうです。
「基本的には、京都市内にある施設などからの依頼に対応しています。今では全国から依頼や問い合わせがあり、京都市内でもメンバーのスケジュールが合わずお断りするケースも。本来なら、より多くの高齢者や施設の方に体験していただき、この活動をもっと広げていきたいのですが、限られたスタッフと予算でやっているので限界があります。遠方だと、交通費などの経費はご負担いただかなくてはなりませんから、地元のネイリストに依頼した方が良いのが現状です。
そのため、最終的に法人化し、メンバーも増やして、いろいろなご要望に対応できる体制にしていきたいです。ただ、法人化すると誰かが常駐する必要があり、それなりの報酬が発生します。また、会計の書類や収支報告書は経験のある私が全部引き受けているのですが、法人化すると外部に発注しなければならず費用がかなりかかります。そのようなことを考えると、現時点ではメリットよりもデメリットが多いですね。具体的にこれからどうするかは今後の課題です」
ただ、全国から問い合わせがある状況は、福祉ネイルの認知度が高まっているということです。
「それはとても良いことです。各地で『ガンチー』のような活動を行ってくださる方が増えれば、私が理想とする、“誰もが年を取ることが楽しみになる社会”に近づくのではと考えています。
また、ボランティア活動は、それを行っている私たちの生活にも彩りを与えてくれています。道に迷っている人に声をかける、ゴミを拾ってゴミ箱に入れるなど何でも良いので、それぞれが無理のない範囲で、ボランティア活動を行う方が増えるとうれしいですね」
1984年生まれ、京都市出身。大学卒業後、一般社団法人京都府サッカー協会職員などを経て結婚。学生時代に2級審判員の資格を取得し、Jリーグの練習試合や全国大会、国体などで審判を務めた。2019年に「福祉ネイリスト」の資格を取得。2020年、友人と福祉ネイルのボランティア団体「ガンチー」を立ち上げ、現在は京都市内の大学の職員として平日の3日間勤務しつつ、ボランティア活動に励んでいる。
(坂本 俊夫)