からだ・美容
寒さと膝痛の関係は 冬に痛みが増す原因や予防法を医師が解説
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:南雲 吉祥
厳しい寒さが続く今冬。寒いと膝が痛くなることがありますよね。階段の昇り降りがつらい、立ち座りが億劫、いつも膝に違和感がある……。こうした寒さによる“膝痛”は、なぜ起こってしまうのでしょうか? その原因や予防法、膝の痛みを改善する方法について、ナグモクリニック東京の整形外科専門医、南雲吉祥医師に解説していただきました。
◇ ◇ ◇
寒い時期に増える膝痛 寒さで交感神経と筋肉の血流に変化が
寒さで膝痛が起こりやすい原因は、まだ明らかになっていません。ただし、気温の低下によって「交感神経が刺激される」ことや「筋肉の血流が悪くなる」ことで強い痛みを感じるようになると考えられています。それぞれの理由を見ていきましょう。
○交感神経の刺激による痛み
動物を用いた研究では、気温の低下によって全身の交感神経が刺激されることが明らかになっており、これが痛みの増幅に関与していると考えられています。このことから、冬は冷え込みが強いため、痛みを感じやすいといえるでしょう。
○筋肉の血流低下による痛み
外気温が低くなると、体温を維持するために自律神経が働き、血管が収縮して筋肉の血流が悪くなります。血流が悪くなると手足など関節周りの筋肉が縮み、関節の動きが制限されることによって膝の痛みが生じやすくなるのです。
冬の膝痛を予防する方法とは 運動と入浴で血流改善を
まず、体を冷やさないこと、そして疲労や睡眠不足に十分注意をするようにしましょう。そのうえで、ストレッチや運動、入浴などを行って、血行を良くすることも大切です。それでは、膝痛の予防法について解説していきます。
1. ストレッチで膝の筋肉をゆるめる
膝周りの関節を中心に、筋肉をしっかりと動かして、血流を改善することが重要です。太ももの前側(大腿四頭筋)や後側(ハムストリングス)、ふくらはぎ(腓腹筋)などをよく伸ばして、膝周りの筋肉をゆるめるようにしましょう。
2. 運動で血流を良くする
入念なストレッチで筋肉を引き伸ばした後は、適度な運動で血液を循環させる必要があります。ただし、普段、体を動かしていない人が急に運動をすると膝を痛めることも。
全身運動を行う場合は、膝に負担のかかりにくいエアロバイクや水泳がおすすめ。とくに水泳やプールでのエクササイズは、浮力で体重の負荷が50%軽減することから膝へ負担をかけずに行うことができるので、膝が痛い方には最適といえます。
加えて、筋力トレーニングも必ず行いましょう。ヒトの消費エネルギーの70%を占める基礎代謝。そのなかでも筋肉による消費エネルギーは20%にもなります。つまり、筋肉量が増えれば基礎代謝の増加により消費エネルギーが増大し、自然に痩せやすい体に変わっていくのです。
本来は体の筋量の大部分を占める下半身のトレーニングを中心に行いたいところですが、膝が痛い方はまずは胸や背中など、膝を使わない部位のトレーニングから開始しましょう。膝に負担のかからない下半身のトレーニングも数多くあるので、トレーナーがいる環境下ならぜひ指導を受けてみてください。
3. 入浴で体を温める
体を温めと血管が拡張し、全身の血流が改善することで痛みが緩和されます。入浴は、一番手軽で効率の良い方法といえるでしょう。適温は37~39度。熱すぎると痛みのある部分を刺激してしまうため、注意してください。心臓に不安のある方やご高齢の方は、全身浴ではなく半身浴や部分浴でも効果を期待できますよ。