からだ・美容
寒さと膝痛の関係は 冬に痛みが増す原因や予防法を医師が解説
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:南雲 吉祥
加齢に伴い生じる膝痛の多くは「変形性関節症」
年齢を経るにつれて生じた膝痛は、「変形性膝関節症」と呼ばれる病態が関係している場合があります。変形性関節症とは、関節の中にある軟骨が削れたり摩耗したりするうちに、徐々に関節の幅が狭くなり、やがて骨同士がぶつかり合って骨の形そのものが変形してしてしまう疾患です。
変形性関節症には、次のような初期症状が見られます。こうした動作時に痛みや違和感を覚えたら、変形性関節症を発症しているかもしれません。
・膝が腫れ、触れると痛みが生じることもある
・膝の曲げ伸ばしが困難になる
・正座やあぐらが困難になる
・長時間の歩行や階段の昇り降り、立ち仕事で痛みが出る
また、変形性関節症は女性に多いことでも知られています。その原因のひとつは女性ホルモンの減少です。女性ホルモンであるエストロゲンは、私たちの骨や軟骨の変性を防ぐ作用を持っています。そのため、閉経後、エストロゲン量が一気に減ると、関節を構成する組織の変性が進み、変形性膝関節症を発症するのです。また、女性は元来、男性に比べて筋肉量が少ないため、膝関節を支える構造が弱いことも関係しています。
さらに、運動やけがをきっかけとする関節内組織の損傷や関節リウマチによる関節破壊のほか、肥満による関節への持続的負荷が変形性関節症を発症する引き金になることも。
肥満の人の割合は、年代にもよりますがゆるやかな上昇傾向を示しているため、変形性膝関節症の予備軍も増加傾向にあるといえるでしょう。体重が増えると、膝には増えた体重の3倍もの負荷がかかると考えられています。「5キロしか増えてないから大丈夫」と思っても、膝には15キロの負担がかかっていることに。体重が増えるほど、膝を痛めることにつながるのです。
肥満によって変形性関節症を発症している人、またそのリスクがある人にとって、減量することは何よりも優先すべき予防法です。しかし、いきなり高強度の運動を行うと膝の関節を痛めてしまうことに。水泳など、膝への負荷がかかりにくい運動を選択すると良いでしょう。
屈伸すると膝が鳴るのはなぜ? 痛みや腫れを伴う場合は受診を
変形性膝関節症は、痛みが出る前段階で膝を動かした時に音がするといった違和感を覚える人が多いようです。膝などの関節から「ポキッ」「パキッ」と鳴る音は、関節音と呼ばれています。その原因は、今でもはっきりと明らかになっていません。
近年の研究によると、関節内で起きる気圧の変化が関わっているといわれています。膝の音については、単発でポキッと鳴る、また痛みなどの症状を伴わない場合はとくに問題ありません。
しかし、音がよく鳴るようになったり、音とともに痛みや腫れが生じたりする場合は注意が必要です。こうした時は「パキッ」といった高い音ではなく、「ゴリゴリッ」とした何かがこすれるような低い音が認められ、多くの場合に痛みを伴います。
これは損傷した関節内の組織がすり合うことで起こる音なので、早めに整形外科を受診しましょう。
(Hint-Pot編集部)
南雲 吉祥(なぐも・よしあき)
整形外科専門医。医学博士。整形外科領域のがん治療医として活動。米国では再生医療の研究に従事する。趣味は総合格闘技。自身のけがの経験をいかし、現在はスポーツ整形外科医として、アスリートへのサポート活動を行っている。2023年6月、東京都港区白金台に整形外科と再生医療の専門クリニック「NAG整形外科」を開業。