食
おでん作りで失敗する理由 「煮込むほどおいしい」は嘘? 栄養士が解説
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
まだまだ寒い日が続きます。食べたくなる温かい料理として「おでん」を思い浮かべることもあるでしょう。具材を入れて煮込めば完成ですが、おいしく作るためにはたくさん煮込んだほうが良いのでしょうか? 2月22日の「おでんの日」にちなみ、元家庭科教諭で栄養士の和漢歩実さんに伺いました。
◇ ◇ ◇
おでんのルーツとは
おでんは、もともと現在のような形で食べられていたのではなく、そのルーツは豆腐田楽にあるといわれています。豆腐田楽とは、拍子型に切った豆腐を竹串に刺して焼き、みそを塗ったもので、室町時代に食べられていました。田楽に「お」を付け、「おでん」と呼ばれることになったようです。
江戸時代になると、豆腐だけではなく、こんにゃくや里芋、魚などが用いられ具材の種類が増えていきました。屋台などで売られ、手早く食べられることから庶民に人気の食べ物に。その後、焼かれていた田楽が煮込みで作られるようになり、汁気の多い鍋物料理としておでんが流行。全国に広まり、地域特有の具材やだし汁が用いられ、おでん文化が発展していきました。
今でこそ、おでんは日本人に親しまれる家庭料理のひとつですが、1945(昭和20)年頃までは屋台やお店で食べるものだったようです。
おいしく作るコツは「グループ分け」
おでんは、煮込んでいるうちに具材からも旨味が出て、だし汁と絡み合って絶妙なおいしさになります。しかし、煮込む時間が長ければ良いかというとそうではありません。長時間じっくり煮込むと味が染み込み、おいしくなると思いがちですが、煮すぎると失敗につながります。
たとえば練り物が膨らみすぎたり、ゆで卵や里芋などは煮崩れたり。餅巾着の油揚げが破れてドロドロになったり、うっかり具材を焦がしたりすることも。煮込みすぎると、具材の旨味がだし汁にすべて出てしまい、本来のおいしさが損なわれます。
具材は地域によって違いがありますが、作るときの目安としては、「火が通りにくいグループ」と「練り物グループ」に具材を分けると良いでしょう。まず大根、こんにゃく、結び昆布、ゆで卵など火が通りにくいグループから入れます。鍋へ入れる前に、大根やこんにゃくなどは表面に隠し包丁を入れておくと良いでしょう。こんにゃくはさっとゆがき、大根は下ゆでしておくと味が染みやすくなります。
がんもどきやさつま揚げなどの練り物は、湯通しをして余分な油を取り除くとさらにおいしくなるでしょう。少しの手間でおいしくなるので、下ごしらえは大切です。
大きめの鍋で具材が浸るくらいたっぷりのだし汁を入れ、火が通りにくいグループを入れて弱火でコトコト煮ます。30分ほどを目安に、大根がやわらかくなったら練り物グループを加えます。練り物の旨味が汁に出すぎないよう、10~15分ほどを目安にしましょう。はんぺんは火が通りやすいので、直前に入れるのがポイント。汁をかけてふっくらしたら完成です。
火にかける時間は45分程度。具材は入れる順番を意識し、あまり煮込みすぎないよう注意しましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾