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30歳を過ぎてから競技を開始 ビキニフィットネス競技で輝く安井友梨が背負う覚悟とは
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筋肉の美しさだけでなく、ウォーキングやポージングなどのエレガントな振る舞いが魅力的なビキニフィットネス。その世界で“絶対女王”の存在として君臨するのが、国内7連覇中と無敵の安井友梨さんです。ビキニフィットネス競技の世界に飛び込んだのは、30歳を過ぎてから。競技を始めてたった10か月で日本一になってから、39歳の現在までトップの座に君臨し続けるモチベーションはなんなのでしょうか。その生きざまや思いなどを伺いました。前編をお届けします。
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「なりたい姿」として始めたビキニフィットネス
転機は30歳の時だったといいます。安井さんには2つのきっかけがありました。1つ目は、ジムに通っていた母親が半年間で20キロのダイエットに成功したこと。母親が足取り軽く外に出かけたり、ファッションを楽しんだりするようになった姿に驚いたそうです。2つ目は、ちょうど1回目のビキニフィットネス選手権が開催され、近所のジムに通っている人がチャンピオンになったと耳にしたこと。
当時は、どちらかというとぽっちゃり体形だったという安井さん。「同じジムに通えば、私もこういうふうになれるかもしれない」と、ジムに電話をしたのが「初めの一歩だった」と振り返ります。単に痩せたいという漠然とした思いで入会したそうです。
入会後、トレーナーから「体重を目標にするのではなく、どんな姿になりたいかを考えてみてください」と助言を受けます。そこで、「なりたい姿」としてビキニフィットネスの競技者を目指すことにしました。最初は「トレーニングを継続するための目標作り」という意味合いが強く、安井さん自身も「痩せたらやめる」くらいの思いでいたそう。しかし、始めてわずか10か月後に出場したビキニフィットネス選手権で人生が激変します。
「優勝したのもびっくりですし、日本代表になるというのもびっくりしました」と、いきなり日本チャンピオンに輝きます。そして世界選手権への派遣が決まりました。
世界の壁に当たって知った「自分がやりたいこと」
デビュー戦で日本チャンピオンになり、トレーニングを始めて1年でいきなり世界の舞台へ。しかし、2015年にハンガリーで行われた世界選手権は予選落ちでした。その晩は、流れ出る涙が止まらず、一睡もできなかったそうです。
「国内で優勝して、こう……なんだか、負けることの怖さも知らずに、右も左も分からないまま、いきなり世界のステージに立った感じです。世界の高い壁にぶち当たって、結果は予選落ち。夢か、幻か、みたいな感じで(苦笑)。本当に大人と子どもぐらいのレベル差があった、初めての世界選手権でした。こんなに期待していただきながら、何も結果を残すことなく予選落ちしてしまって。私の中で初めて、自覚みたいなものが芽生えました」
初めての敗戦で知った世界の壁の高さ。しかし、この経験があったからこそ安井さん自身の「やりたいこと」が明確になり、“覚悟”を持ったといいます。
「これからの競技生活において、いつか必ず自分の手で、ビキニ選手として、この日本ボディビル連盟に恩返しがしたい。そう強く思いました。一度きりの人生なので、やれるところまでとことんこの競技に向き合って、育てていこうと。ボディビルといえばビキニフィットネスと誰もが知るような競技にしたいと、あのときに思ったんです」