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二十四節気「啓蟄」の意味と由来 2024年はいつ? おすすめの食べ物も

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

しだいに暖かくなり春の訪れを感じる頃(写真はイメージ)【写真:写真AC】
しだいに暖かくなり春の訪れを感じる頃(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「啓蟄(けいちつ)」とは、季節の変化を知る目安としてきた二十四節気のひとつ。土の中で冬ごもりしていた生き物たちが、地上に出てきて活動を始める頃です。2024年の啓蟄はいつからいつまでなのでしょうか。しだいに暖かくなり、春の訪れを感じるこの季節。習わしや食べ物について解説します。

 ◇ ◇ ◇

    目次

  1. 啓蟄とは 語源や意味
  2. 2024年の啓蟄はいつ?
  3. 啓蟄の時期の習わし
  4. 啓蟄の七十二候 季節の移り変わり
  5. 啓蟄の時期の食べ物

啓蟄とは 語源や意味

 二十四節気のひとつである「啓蟄」は、「けいちつ」と読みます。二十四節気とは、太陽の動きに合わせて1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにその季節それぞれを6つに分けたもの。全部で24あり、古くより季節を感じる目安として用いられてきました。二十四節気は立春から始まり、雨水に続く啓蟄は3つ目の節気です。

 啓蟄は、土の中で冬ごもりしていた虫たちが目覚めてそろそろ活動を開始する頃のことです。「蟄(ちつ)」は「土の中にこもった虫」を表し、「啓(けい)」は「開く」の意味を持ちます。この2つの漢字が合わさり、春の季語としても用いられる「啓蟄」になりました。

 昔は、虫というと昆虫に限らず、ヘビやカエル、トカゲなど小さな生き物も指しました。漢字で書くと「蛇」「蛙」「蜥蜴」で、虫へんとなっている点も興味深いところ。啓蟄の後は、春本番の春分となります。

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2023年の啓蟄はいつ?

 2024年の啓蟄は3月5日(火)~3月19日(火)です。しだいに気温が上がり春めいてくるこの頃の雷は、「虫出しの雷」とも言われます。冬ごもりしていた虫たちが、雷に驚いて這い出てくるものと考えられていました。寒の戻りを繰り返しながら、ひと雨降るごとに暖かく、日も長くなっていきます。

啓蟄の時期の習わし

 啓蟄の時期の主な習わしは、次の通りです。

○ひな人形の片づけ

ひな人形の片づけ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ひな人形の片づけ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 雨水の時期に飾ると縁起が良いとされるひな人形は、啓蟄のうちに片づけます。3月3日の桃の節句が終わったら、翌日にはすぐに片づけなくてはいけないと思われがちですが、そこまで慌てる必要はないようです。啓蟄の天気が良い日に、人形を外気に当てて湿気を飛ばしてから、ホコリや汚れを取りましょう。

○十六団子の日

団子(写真はイメージ)【写真:写真AC】
団子(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 3月16日は、田の神が降りてくる日とされています。秋と冬は山にとどまり「山の神様」になっていた神様が、春になって「田の神」になり里山へ。稲の成長や実りに力を貸してくれると考えられてきました。東北や関東地方の一部には、この日に16個の団子「十六団子」をお供えする風習があります。

○精霊の日

小野小町の歌碑に偲ぶ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
小野小町の歌碑に偲ぶ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 精霊と書いて「しょうりょう」と読みます。3月18日は、歌人として知られる柿本人麻呂、小野小町、和泉式部の3人の命日と考えられ、記念日になっています。3人の命日についての定かな記録はありません。しかし、3月18日前後は春のお彼岸が近いこともあり、飛鳥時代や平安時代に活躍した有名な歌人たちの霊魂を偲ぶ日とされています。

啓蟄の七十二候 季節の移り変わり

桃の花(写真はイメージ)【写真:写真AC】
桃の花(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 二十四節気の節気(約15日間)を、さらに3つ(約5日間)に分けた季節の目安を「七十二候」と言います。日本特有の季節の移り変わりを感じ取ることができる、古来伝わる区分です。啓蟄の七十二候を見てみましょう。

○初侯 蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)

 3月5日頃。冬ごもりをしていた生き物たちが地中から出てきて動き始めます。春の日差しの下、軽快に活動する姿を目にするようになる時期です。

○次侯 桃始笑(ももはじめてさく)

 3月10日頃。桃のつぼみが丸く膨らみ、花が咲き始めます。昔は花が咲くことを「笑う」「笑む」と表現しました。

○末侯 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

 3月15日頃。厳しい冬を越したサナギが羽化し、美しいチョウとなって羽ばたく頃です。菜虫とは青虫のことを言います。

啓蟄の時期の食べ物

 古くから「春の皿には苦味を盛れ」との言葉があります。寒さを乗り切るために溜め込んだ脂肪や老廃物を排出し、眠っていた体を目覚めさせるには、苦みのある食材を食べるのが良いと考えられてきました。啓蟄の時期は、独特の苦みや辛み、香りのある食べ物が旬です。

○ウド

ウド(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ウド(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 独特のほろ苦さとさわやかな香り、しゃきしゃきした食感を楽しむ山菜です。アク抜きをして酢の物、和え物などに。

○からし菜

からし菜(写真はイメージ)【写真:写真AC】
からし菜(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 一般的には漬け物やおひたしなどにして食べます。名前の通り、特有の辛みを持つ菜花です。種から和からしが作られます。

○アシタバ

成長力の強いアシタバ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
成長力の強いアシタバ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 日本原産といわれ、古くから食用とされてきました。成長力の強い植物で、今日葉を摘んでも明日には新葉が出ているほど繁殖力があるのが名の由来。青汁の原料としても有名です。

【参考】
「365日を豊かに過ごす 日本の四季、二十四節気、七十二候」(宝島社)
「にっぽんの七十二候」(エイ出版社、エイはきへんに「世」)
「絵で楽しむ 日本人として知っておきたい二十四節気と七十二候」水野久美書(KADOKAWA)
国立天文台「暦Wiki」七十二候
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FBCB7BDBDC6F3B8F5.html

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu