インタビュー

家族の余命を受け入れられないときは「辛いけど見守って」 終末期を支える家族の過ごし方 

著者:Hint-Pot編集部・白石 あゆみ

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東京医療保健大学の櫻井智穂子准教授 【写真:Hint-Pot編集部】
東京医療保健大学の櫻井智穂子准教授 【写真:Hint-Pot編集部】

元気なうちに“もしも”のときの相談相手を

 また、櫻井氏は見守る側がひとりで抱え込みすぎないように注意を促した。多くの場合、余命を宣告されるときは患者より先に、家族へ明かされるという。

 最近は患者本人が病名や余命の告知を希望することが多いが、本人に明かされるまでにひとりで抱える重責感と孤独感、患者本人に黙っている罪悪感やうしろめたさ。それらのせいで、患者と距離を置いてしまったり、適切な関係でいられなくなってしまう人もいるそうだ。

「残された時間の中で、変な溝や遠慮が生まれてしまうのは、とても辛いことです。余命のことなどを直接的な話はしなくても、見守る側は別の場所で気持ちを吐き出すなどして、患者さんと一緒にいる時間をできる限り持っていほしいと思いますね」

 櫻井氏によると、医師や看護師も患者や家族の気持ちを知りたい、力になりたいと思っているといい、担当の専門職員に打ち明けてほしいとした。しかし、実際のところ忙しく働く姿を目の当たりにする病棟の職員に、話しかけるのは気が引ける人もいるだろう。

 そこで、全国の「がん診療連携拠点病院」等にある「がん相談支援センター」といった、相談を専門に受ける窓口を上手に利用し、なるべく不安やイライラを溜めないようにしてほしいとし、それに加え櫻井氏の持論だというが、顔見知りの近所のかかりつけ医のような、専門的な知識を持つもしものときの相談相手を決めておくことをお勧めしたい。

「終末期は病状がコロコロと変わったり、次から次へと治療について説明され情報の大洪水になります。実際にご遺族の話を聞くと、『そのときは無我夢中で訳が分からなかった』と話されるご家族がとても多いです。ただでさえショック状態のときに判断を迫られますから、ひとりで決めるのはとても負担が大きいのです。そのため、ある程度の医療知識があり冷静に判断できる第三者の助言があると安心できますよ」

 親類や友人など人間関係のしがらみがあると、つい「折角いってくれたし」「私達のことを思って調べてくれたわけだし」と意に添わない判断をしてしまいがちだ。そのため元気なうちから、相談相手を決めておくといいという。

 現在、国は地域包括ケアを推進しており、在宅や施設等で療養し、地域で看取るというシステムの実現化を進めている。遺族にとって、「できる限りの介護ができた」と思えることが、病気の家族が亡くなった後の後悔や罪悪感を軽くする。思い残すことなく病気の家族を支えることができるよう、更なる地域包括ケアシステムの充実が期待される。今後さらに見守る側への様々な判断が委ねられていくことになるだろう。今から心構えと準備を進めていきたい。
 

◇櫻井 智穂子(さくらい ちほこ)
東京医療保健大学 医療保健学部 看護学科 准教授。看護学博士/看護師/保健師。2010年千葉大学大学院看護学研究科修了。同大学院看護学研究科(特任講師)を経て2013年より現職。研究テーマは、「エンドオブライフにかかわる意思決定に関する研究」「終末期の緩和を目的とした療養についての患者と家族の決断を支える看護援助に関する研究」。

(Hint-Pot編集部・白石 あゆみ)