仕事・人生
「いつか見返したい」 元宝塚男役が退団後に進んだ別世界 異色経歴の裏にあった苦悩
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教えてくれた人:竹山 マユミ
男役から突然の娘役転向宣言 プロデューサーに「次の公演から娘役になりたい」
竹山:最初、配属になった星組はどういう雰囲気だったんですか。
生尾:星組はやっぱりエネルギッシュでしたね。当時は麻路さき(69期)さんがトップスターさんで、のちにトップになられた稔幸(71期)さんがいました。男役さんの群舞がかっこいい組でしたね。その分、稽古場は厳しかったですが、男役に対しての美学がありました。品がある男役、というのが星組の強さだったのかなと思います。
竹山:キリッとした表情でみなさんが大階段を降りてこられるのは、今でも目に焼き付いている光景です。
生尾:私が初めて組子として入らせていただいて、男役の群舞の中に入れてもらったときはしびれましたね。もともと宝塚ファンだったので。自分もそこにいるのに、後ろからトップさんとか、何年もやってらっしゃる男役の上級生の方々の背中を見たときに「うわー、宝塚すごいな」って。言葉では言い表せないぐらいゾクゾクするものがありました。
竹山:そんななかで、男役をされていたのに娘役へ転向されました。どんなきっかけと経緯があったのでしょうか。
生尾:もともと、宝塚に入るときは娘役志望でした。身長が162センチに満たないくらい低く、体重も38キロくらいで、いわゆる娘役の体格だったんです。でも音楽学校に入ってから4~5センチぐらい背が伸び、166センチくらいになったことで、娘役になれなかったのです。研6(入団6年目)のとき、「ベルサイユのばら」では男役で衛兵隊をやっていましたが、入団したときからどうしても着たかった輪っかのドレスを着た娘役の方を見たときに、やはり私はこれを着たいと思ったんです。
その頃、私はいろいろな意味でぶっ飛んでいたので、ファンの方がいる前でプロデューサーさんを呼んできて「私、次の公演から娘役になりたいと思います」って言っちゃったんです。もう前代未聞もいいところですね。
竹山:そこでプロデューサーさんはどのような反応だったのですか。
生尾:「えっ、男役辞める?」ってびっくりしていましたね。ファンの方も驚いていましたが、私は「娘役になりたいから、なるね~」といった感じで、あっけらかんと……。
竹山:ご苦労はなかったのですか。男役から娘役って、声も仕草も、何から何まで違いますよね。
生尾:私はそこの部分においてとくに苦労はなかったのですが、今でも足を開いてしまうという“男”として生きてきた名残は、恥ずかしながら残っています。