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食料を常温で保存するポイント ナチュラリストのキッチン事情

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

常温保存をするためにはさまざまな方法が

キッチンカウンターの下の発酵棚。キヌアしょうゆ、みそ各種、お酢各種、みりんやかんずり、タバスコなど世界の発酵食品を手作りして常温保存【写真:小田島勢子】
キッチンカウンターの下の発酵棚。キヌアしょうゆ、みそ各種、お酢各種、みりんやかんずり、タバスコなど世界の発酵食品を手作りして常温保存【写真:小田島勢子】

 まず、食材を常温保存するためには、主に「乾燥」、「発酵」、「塩漬け・砂糖漬け」、「酢漬け・アルコール漬け」などの方法があります。

○乾燥
 食品には水分が含まれているため、ドライにして水分量を調整することで、常温で保存することができます。これは菌類(とくにカビ類)が乾燥に弱い種類が多いため、その条件を生かした方法です。身近な食材では、乾物の昆布やシイタケ、カツオ節(とくに削り節)、ビーフジャーキー、茶葉やローリエなどのドライハーブやスパイスなどがそれにあたります。

○発酵
 素材を好む菌を混ぜ込み、菌の力で発酵させます。みそ、しょうゆ、豆板醤、キムチや漬物は、穀物や野菜などに塩や香辛料を入れて発酵させることで常温下の保存性を高めます。お酢はフルーツなどの糖分を食べる酵母が作り出す酢酸によって、酸性がしだいに強くなり、殺菌効果が生まれます。

○塩漬け、砂糖漬け
 梅干しは発酵食品ではなく、塩漬けにあたります。梅を塩漬けすることで保存性を高くし、梅シロップは梅を砂糖漬けにして作ります。いずれも梅のクエン酸も加わり、殺菌効果で常温保存がききます。

○酢漬け・アルコール漬け
 酢玉ねぎなどの酢漬けピクルス、梅酒やビワの葉のチンキ、バニラエクストラクトなど、菌が生きることができない極酸性や強いアルコール濃度に漬け込むことで殺菌効果が期待でき、常温保存がききます。

キッチンに所狭しと並ぶお手製の保存食品

キッチンの棚には乾物や発酵中のみそ、酢や手作りチンキが【写真:小田島勢子】
キッチンの棚には乾物や発酵中のみそ、酢や手作りチンキが【写真:小田島勢子】

 こういった古くから歴史とともに伝わる先人の知恵をお借りし、我が家のキッチンの天井には庭から摘んだビワの葉やハーブ、そしてたくあん用の大根が乾燥のために吊るされています。小さなキッチン棚と小さなキッチンキャビネットには、常温で保存できる発酵食品や乾物が。壁かけには風邪をひいたときや、けがをしたときなどに使う薬草のチンキが所狭しと陳列しています。

 私たちが過ごすときとともにゆっくりと熟成していくそれらの様子は、どっしりとしていて、日々あくせく時間に追われる私たち人間たちを「何をそんなに生き急いでいるの?」と諭しているよう。

 家族の健康とおいしい笑顔を作り出してくれるこの小さな空間に、私たちは今日も心身ともに守られ、ゆっくりとスローダウンすることを教えてもらっています。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/