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どうぶつ

ドイツで暮らす2匹の元保護猫 去勢・避妊手術の当日に見せた行動と飼い主の“失敗”

公開日:  /  更新日:

著者:島崎 英純

去勢・避妊手術における情報を事前にリサーチ

 去勢・避妊手術が決まったのをきっかけに、インターネットを駆使していろいろとリサーチしました。術後服というのは、手術後に患部を気にした猫が舐めて化膿するのを防ぐための服のことだそうです。ただし、この術後服はメス猫の避妊手術専用とのこと。なぜならば、避妊手術はお腹の下あたりを開くもので、患部に服を着せても排泄部分に穴が開いていれば問題ないからです。

 一方で、オス猫の去勢手術は単刀直入に陰嚢(いんのう)を切開して精巣を取ってしまうものなので、もろに排泄部分が患部になり、服を着せても防御できないのだそう。なので、オス猫の場合は患部を舐めないように通称「エリザベスカラー」という円錐台形状の保護具を首に巻くことになります。

 また、去勢・避妊手術は全身麻酔での手術になるそうで、術後に麻酔が切れて猫が正常状態に戻るまでは退院できないことも知りました。退院までの時期は病院によって異なりますが、ココロとサツキがお世話になる動物病院は、当日午前中に預けて夕方以降に退院の流れになるとのこと。宿泊なんてなったら猫たちはもちろん、僕自身も心配で精神がもちませんから、当日退院はありがたい限りです。

何かを察した愛猫たち おとなしくキャリーケースに収まる

 手術日直前までの一番の難題は、前日夜からの絶飲食です。ココロもサツキも食欲旺盛。朝、昼、晩のごはん時には抜群の腹時計を駆使してシュプレヒコールを送るのが慣例になっていたので、彼らの要求を無視し続けられるだろうかと大変懸念しました。

 ただ、実際に手術前日を迎えて夕ご飯をあげないでいると、猫たちは「なんだかいつもと様子が違うな」と思ったようです。深夜になるとベッドの片隅で殊勝に佇み、おとなしくしていました。そして、手術日当日ともなると明白に異変を察知し、「僕たち、もしかして捨てられるの?」とばかりに目を潤ませながら僕を見つめてきたのです。

 そして彼らは「さようなら……」とばかりに静々と自らキャリーケースに収まる従順ぶり。このときは、手術がうまくいかなかったときの前例なども見聞きしてしまった僕のほうがブルーな気持ちになっていたはずです。

 意を決して朝の9時に動物病院へ向かうと、引き取ってくれたのは女医さんではなく別の女性スタッフでした。その女性に「なぜ猫を預ける時間が午前9時から正午の間と幅があるのですか?」と聞いたら、「手術は午前と午後の診察時間の間の休み時間にするからなのよ」と教えてくれました。

 しまった! だったら12時ぴったりに預ければ良かった……。だって、9時に預けたら、猫たちは約3時間、病院内のどこかに隔離されて手術の時を待つことになってしまうではありませんか。さらに、術後も午後6時まで留め置きで、約9時間も僕と離ればなれになってしまいます。キャリーケースの網目から哀願のまなざしを向ける彼らにつかの間の別れを告げ、僕はひとりで病院を後にして、いったん自宅へと戻りました。

 と、今回はここまで。次回は手術を受けた猫たちの様子と、その後の顛末について綴ります。

(島崎 英純)

島崎 英純(しまざき・ひでずみ)

1970年生まれ。2001年7月から2006年7月までサッカー専門誌「週刊サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画出版社刊)編集部に勤務し、Jリーグ「浦和レッドダイヤモンズ」を5年間担当。2006年8月にフリーライターとして独立。2018年3月からはドイツに拠点を移してヨーロッパのサッカーシーンを中心に取材活動を展開。子どもの頃は家庭で動物とふれあう環境がなかったが、三十路を越えた時期に突如1匹の猫と出会って大の動物好きに。ちなみに犬も大好きで、ドイツの公共交通機関やカフェ、レストランで犬とともに行動する方々の姿を見て感銘を受け、犬との共生も夢見ている。