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米国で人気のキノコ栽培 自給自足に対する意識の高まりも
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近年、「ホームステディング(自給自足)」に注目が集まっているという米国。そこで、米ロサンゼルスで夫と娘3人、鶏、犬たちと暮らすナチュラリストの小田島勢子さんに、最近現地で流行っているというキノコについて綴っていただきました。築70年になる小さな平屋の庭で少しずつ家庭菜園を広げる小田島さんが、キノコの驚くべきパワーをご紹介します。
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咲き誇る花と同じくらい散策道でよく見かける存在
私の住むカリフォルニアはこの季節、各地で花が満開になります。散策していると、トレイルで見かける花と同じくらいよく見かけるものがあります。それはキノコです。長らく地中で休んでいた菌糸という糸状のものがキノコになり、たっぷりと水分を含んだ大地から地上に顔を出します。
キノコは菌類の一種で、カビの仲間です。菌糸を伸ばして成長し、条件が合うとキノコになり、そこから胞子が放出され次の世代が生まれます。菌糸が地を這い成長する姿は、カビととても似ていて、一見すると見分けがつかないこともあります。菌糸の集合体である菌糸体が、温度や湿度、酸素の量などの条件を満たしたとき大きく成長し、キノコという実をつけるのです。
キノコは傘の下から胞子を放出し、次の世代へと命をつなぎます。また、胞子を出さなくとも、菌糸が地中で伸びていくことで自分たちを大きく増やすことができるのが特徴です。おもしろいことに、キノコ自体を顕微鏡で観察すると、菌糸が折り重なって形成されているのがわかります。
植物でたとえるならば、キノコは花や実の部分で、地中に埋まっている菌糸体と呼ばれる部分が根と幹などの役目をしています。このことから、こちらではキノコ栽培をする人を、植物が実を結ぶことを意味する「fruiting(フルーティング)」と呼びます。
日照時間の影響が少なく、室内でも栽培しやすい
10年以上も前から発酵や腐敗など“菌”の世界に魅了されている私は、菌の特性を知るなかで、同じ菌類であるキノコの栽培も始めるようになりました。
育て方についてはまたの機会に詳しくお伝えしたいと思いますが、発酵の流れを知っている人や観葉植物を育てるのが好きな人にとって、一部のキノコは栽培がとても簡単です。気温、湿度など菌にとって適正環境となる条件が整えば、室内でも育てられることが利点と言えるでしょう。野菜と比べ、日照時間の影響もあまり受けません。
まず、成長する際の栄養のとり方によって、キノコは大きく「腐生菌」と「菌根菌」に分けられます。
腐生菌は落ち葉や倒木、おがくずやわらなどの有機物を分解し、栄養にして育ちます。腐生菌で分解された倒木や落ち葉は朽ち、やがて土へ還っていきます。腐生菌のキノコは、シイタケやヒラタケ、エノキダケ、エリンギ、マイタケやブナシメジ、マッシュルームなどです。
菌根菌は生きている植物と共生している菌で、菌糸を土の中に張りめぐらせて植物の根に共生し、菌根を作ります。チッ素やリン、カリウムなどの養分と水を吸収し、菌根(植物の根と菌類が作る共生体)を通して共生している植物に届けます。菌根菌のキノコには、マツタケやトリュフ、ホンシメジがあります。共生関係にある植物は、彼らが光合成で作った糖類などを菌類に与える役目をし、お互いに持ちつ持たれつの関係を築いています。