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仕事・人生

出産時の壮絶体験が“学び”に関心を持つきっかけに デザイナーから教育系事業の創業者への転換

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著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

原稿用紙柄の着物を着用し、「伝える力を育むデザイナー」としても活動する本下瑞穂さん【写真提供:本下瑞穂】
原稿用紙柄の着物を着用し、「伝える力を育むデザイナー」としても活動する本下瑞穂さん【写真提供:本下瑞穂】

 読書感想文が書けない子どもたちの救世主となっているのが、「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」というデザイン原稿用紙。デザイン×教育のアイデア商品を生み出したのは、芸術大学で現代美術や情報デザインを学んだ本下瑞穂さんです。卒業後は印刷会社でグラフィックデザイナーとして働いていた彼女が、なぜ教育系事業会社である「コトバノミカタ」を立ち上げることになったのでしょうか。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。前編では、本下さんが事業を立ち上げたいきさつについて伺いました。

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毎年夏になると親も子どもも「書けない」と頭を抱える読書感想文

「読書感想文が書けない」

 夏休み前後になると、小学生のお子さんを持つ親御さんからこんな声を聞くようになるといいます。そんな親御さんや子どもたちに重宝されているのが「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」、通称「デザイン原稿用紙」です。これを使うと、読書感想文がスラスラ書けると話題になっています。

 この「デザイン原稿用紙」を生み出したのが、コトバノミカタ代表取締役社長の本下瑞穂さんです。デザインの世界で生きてきた本下さんにとって、教育の世界は未知の世界。それでも足を踏み入れたのには理由がありました。

 本下さんが新卒で入った会社は、印刷会社の企画制作部。当時の出版・制作業は、深夜遅くまで業務を行うのが当たり前でした。本下さんも業務に追われ、気がつけばいつも最終電車で帰る日々。「続けるのは体力的にもしんどいなあ」と感じていた頃、結婚・出産とライフプランに変化が起こりました。

 退職し、しばらくは専業主婦に。同時に、ママたちが集まる主婦のコミュニティへ参加するようになったそう。そこでは、毎年夏になると「読書感想文を子どもが書かない」「子どもが『書けない』と言って泣いて困った」「仕方ないから代わりに書いてあげた」という話をよく耳にしていました。

 実は、この「読書感想文が書けない」子どもというのは、本下さん自身の子ども時代にも思い当たる記憶がありました。そこで、得意分野であるデザインを原稿用紙に取り入れることで、「もっと楽しく読書感想文が書けるようになるんじゃないか」と考えるようになったといいます。

「私はもともと学習があまり好きじゃなかったから、美術系に進んだ人間でした。でも、子どもが生まれたことで教育の義務があるなあと感じました。デザインはもちろん好きなので、だったらデザイン×教育で何かおもしろいことができるんじゃないかと思ったんです」

 そしてもうひとつ、「なんでもいいのでちゃんと残せるようなものを作りたかった」と本下さんは口にします。