仕事・人生
出産時の壮絶体験が“学び”に関心を持つきっかけに デザイナーから教育系事業の創業者への転換
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子どもに何かを残したいと強く思うように きっかけは壮絶な出産体験
女性にとって、妊娠・出産は時代が変わっても命がけ。本下さん自身にも、第1子出産時に壮絶な出産体験をしました。
「実は、出産がちょっと大変だったんです。出産時に5000ccほど出血しまして……。死んでいてもおかしくないような状況でした」
幸いにも「先生方の懸命な処置のおかげで生き残ることができた」と回顧しますが、いわゆる産後の肥立ちが悪く、本下さんいわく「生きることに必死な状態」が出産後も半年ほど続いたそうです。
そのときに考えていたのが、自分のこれまでの人生について。「デザイナーとして、いろいろなものをデザインして作ってきたのですが、自分が死んだときに残るようなもの、たとえば子どもたちに残せるようなものを作ってこなかった」と感じたそう。そこで、「ちゃんと残せるようなものを作りたい」と強く思うようになりました。
とはいえ、教育の専門家ではない本下さんが、読書感想文が書けるようになるプロセスを知っているわけではありません。そこで、専門家に意見を求めることにしました。
本下さんが事業を始めた兵庫県宝塚市は、市内に複数の私立小学校があり、近くには有名大学もある関西の文教地区です。立地の良さをいかし、「こういうものを作りたいんですけど……」と、「先生」と呼ばれる人たちを人伝いに次から次へと訪問。小学校の先生から大学で教鞭を執る日本語の専門家まで、さまざまな人に意見を聞いて回ったといいます。
そうやってたくさんの知恵を拝借しながら、構想から2~3年かかってようやく完成したのが「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」でした。
また、宝塚市といえば宝塚歌劇団の本拠地。行政として女性の社会活躍支援に力を入れており、本下さんも女性のための起業セミナーに参加しました。そして、併設されている託児所に子どもを預けながら、起業のための準備を進めていったそうです。
京都芸術大学芸術学部情報デザイン学科出身。新卒で入社した印刷会社の企画制作部で、グラフィックデザイナーとしてカタログやリーフレット、ポスターといった紙類のデザインを制作。結婚・妊娠を機に専業主婦に。第1子出産時の壮絶な体験と子どもの教育に責任が伴うことを痛感し、「残せるものを作りたい」と読書感想文がスラスラ書けるようになるデザイン原稿用紙「読書感想文が、よく書ける原稿用紙。」を制作。2017年に株式会社コトバノミカタを設立し、代表取締役社長として子どもの学びや教育に関する事業を展開すると同時に、「作文を楽しくするデザイナー」「伝える力を育むデザイナー」としても活動している。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)