仕事・人生
宝塚の同期は「人に見せたくないところを一番見せている人」 87期のふたりが語った絆
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インタビュアー:竹山 マユミ
綾月さんの3年目に退団を踏みとどまらせたトップスターの説得
竹山:綾月さんが87期で最後に退団なさるというとき、同期のみなさんはどんな反応だったのですか。
晴華:ついに87期がいなくなるのかとちょっと寂しい気もしましたが、正直、まゆみちゃんが最後まで残っている人だとは思わなかった(笑)。87期の誰もが、この人がこんなに宝塚に一番長くいると思っていなかったでしょうね。
綾月:私も思わなかったです。
竹山:それはどうしてですか。
晴華:どうしてでしょうね……。まゆみちゃんは「宝塚大好きです」というキャラではなかったからでしょうね。
綾月:宝塚に入るために一生を捧げて、きっとこの先もここにずっと居続けるんだろうという感じの人っているんですよ。でも、私はそうじゃない。宝塚に入った! 舞台楽しい! みたいな感じだったから、まさか自分が最後になると思わなくて。
竹山:それは本当に感慨深いものがあったでしょうね。
晴華:感慨深かったですね。本当に頑張ったねって思いました。
綾月:頑張ってないよ(笑)。
晴華:頑張っていたよ。私も在籍は短くないですけど、あの世界にそれなりに長くいると、与えられた役割というか、責任もとてもあったと思う。とくにまゆみちゃんは役職も与えられていたし、のしかかっていたものはたくさんあったと思います。だから退団するときは「おめでとう、よく頑張ったね」って、本当にみんなが思っていました。
竹山:18年の在団期間のなかで、退団しようかなと思われたタイミングはそれまでにあったのですか。
綾月:いっぱいあります。
竹山:どんなときにそう思われたのですか。
綾月:下級生のときに1回ありました。入団時、私はそんなに成績は悪くなかったんですよ。でも、もうちょっといい位置で踊らせてもらえるはずなのに……などと思うことが多くて、もう辞めようって思ったときがあったんです。
そんなとき、当時の月組トップスターだった彩輝直(76期、現在は彩輝なお)さんと、全国ツアー中に打ち上げでお話をする機会がありました。私はそのとき、研3(編集部注:入団3年目)。そんな私に対して「今、辞めるのは早い」と言ってすごく説得してくださったんです。3年目の私に対してトップスターさんが1対1で懇々とお話ししてくれて、この方がこうやって言うんだったら、この方がいる間はもうちょっと頑張ってみようと。そう思ってやっていたら18年経ったわけですね。だから本当に感謝しています。
竹山:やっぱり、同じような思いを越えたご経験などがあるんですよね。
綾月:「まだ3年目じゃ何も知らないでしょ。いいところも悪いところもまだわかってないんだから、決断するのは早いんじゃない。何かどうしてもやりたいことがあるんだったら止めないけど、せっかく入ったんだったらもうちょっと頑張ってみたら」ということだったのだと思います。
竹山:お気持ちは変わりましたか。
綾月:変わりましたね。そもそもトップスターさんが私と1対1で真面目に話をしてくださったということが一番うれしくて。実はそれをきっかけに、在団中は彩輝さんと同じ香水を使っていたんです(笑)。
竹山:支えになっているということなのですね。素敵なお話です。そして同期のトップスターさんも見送られて……。
綾月:みんな、私はその子と一緒に辞めると思っていたみたいなのですが……。
<次回に続く>
栃木県出身。6月7日生まれ。愛称は「かおり」。2001年に87期として宝塚歌劇団に入団。宙組公演「ベルサイユのばら2001-フェルゼンとマリー・アントワネット編-」で初舞台。その後、雪組に配属され「ポップスコッチ」でヒロインのひとりに抜擢。「送られなかった手紙」でバウホール単独初ヒロイン。「さすらいの果てに」でバウ公演3度目のヒロインを演じ、「霧のミラノ」「ベルサイユのばら-オスカル編-」で2度の新人公演ヒロインを演じた。ショーのパレード冒頭のソロを歌う“エトワール”を何度も務めた歌姫。2011年、「仮面の男」大女優役で退団。退団後は休業期間を経て、ディナーショーやコンサートなどに出演し、歌手として活動している。2023年、「輝け!しながわジェンヌ2023」で綾月と共演。
千葉県出身。10月19日生まれ。愛称は「まゆみ」「ファービー」。2001年に87期として宝塚歌劇団に入団。宙組公演「ベルサイユのばら2001-フェルゼンとマリー・アントワネット編-」で初舞台。その後、月組に配属され男役として活躍。「エリザベート -愛と死の輪舞-」「ME AND MY GIRL」「風と共に去りぬ」などの作品に出演し、2016年に月組副組長就任。2018年に「カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-」の有明清治郎役、「BADDY-悪党(ヤツ)は月からやって来る-」で退団。退団後は、2018年「現代能『陰陽師 安倍晴明』~晴明 隠された謎…~」(野村萬斎主演)、2021年「火の鳥 異形編」、2022年「レ・ミゼラブル~惨めなる人々~」、2023年「輝け!しながわジェンヌ2023」「スター誕生2」など舞台を中心に活動している。
CHICACO 2023
【日時】神奈川公演(Ougiチーム):5月4日(木・祝)~7日(日)/大阪公演(specialチーム):5月13日(土)~14日(日)
【会場】ラゾーナ川崎プラザソル(神奈川公演)/一心寺シアター倶楽(大阪公演)
【出演】Ougiチーム:嘉月絵理、綾月せり、山口賢人、ゆめ真音、宮本大誠、大谷葉月、安里拓土 ほか
【問い合わせ】舞台「CHICACO 2023」公式サイト
(Hint-Pot編集部・瀬谷 宏)
(インタビュアー:竹山 マユミ)
竹山 マユミ(たけやま・まゆみ)
明治大学卒業。広島テレビ放送のアナウンサーを経てフリーアナ、DJとして各テレビ局やラジオ局で番組を担当。コーピングインスティテュート コーピング認定コーチ。宝塚歌劇団は生まれる前から観劇するほどの大ファン。