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仕事・人生

元トップスター安奈淳さん 「ベルばら」で感じた宝塚の歴史 「だから不滅と言われる」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

インタビュアー:竹山 マユミ

素敵な笑顔の安奈淳さん【写真:荒川祐史】
素敵な笑顔の安奈淳さん【写真:荒川祐史】

 1970年代の宝塚歌劇団で「ベルばら4強」と呼ばれ、人気を博した元男役トップスターの安奈淳さん。宝塚歌劇団の世界をOGたちの視点からクローズアップする「Spirit of タカラヅカ」の第2回は、「ベルサイユのばら」でオスカル役を演じることになった経緯や、アンドレを演じた榛名由梨さんとの関係、「ベルばら」への思いなどについて語っていただきました。当時の安奈さんは「オスカルをやりながらも家に帰って、母親の食事を作っていた」のだとか。聞き手は宝塚をこよなく愛するフリーアナウンサーの竹山マユミさんです。

 ◇ ◇ ◇

「バランス的に何か変だなと思って」アンドレ役からオスカル役に変更

竹山マユミさん(以下竹山):安奈さんといえば、何と言っても「ベルサイユのばら」のオスカル役です。でも実は、最初の配役は榛名由梨さん(49期)が演じたアンドレだったそうですね。「オスカルに替えてほしい」と直談判したという話が伝わっていますが、実際はどうだったのでしょう。

安奈淳さん(以下安奈):私は本当に、そういうことを言ったことはないんですよ。言われるまま、流されるままに生きてきたから。あの時、榛名さんは私より一回り大きかったんです。初演(1974年)では彼女がオスカルを演じて、アンドレは私の1学年下の麻生薫(52期)さんという大柄な男役さんだったから、バランスが取れていました。

 でも私がアンドレをやると、体が細くて麻生さんよりも何センチか背も低いので、バランス的に何か変だなと思って。それを植田紳爾(脚本家)先生にちょっと申し上げたら、先生も「そうやな」となり、変更が決まりました。

 これは後から聞いた話ですが、植田先生は榛名さんに「これでオスカルやったら、オスカルだけで終わるで。他の役もやらんとあかんで」と言われ、榛名さんも「はい。分かりました」とおっしゃったそうです。

竹山:榛名さんとしては、オスカルもアンドレも、どちらもできることになりました。

安奈:そうですね。本当はオスカルを演じるつもりだったと思います。

竹山:当時は「榛名さん=オスカル」のような感じで高い人気を誇っていましたが、アンドレ役でも新しい面を見せてくださいました。そしてやはり、安奈さんのオスカルはイメージがぴったりでした。

安奈:だから、ビジュアル的にそれで良かったと思います。ヒットした一因にはそれもあったのかもしれませんね。

竹山:私は初めて観た「ベルばら」が、安奈さんがオスカルを演じた時のものですから、ずっとそのイメージがあります。

安奈:当時はNHKで舞台中継があり、全国放送はほぼ初めてでしたからね。ただ「ベルばら」は舞台化前から劇画としてものすごく人気があって、当初は「生身の人間が演じるというのはどうなの」みたいな感じもありました。榛名さんも初演の頃は、そうした部分でかなり苦労されたようです。私の時もやはり、そういう苦労は少しありました。

竹山:安奈さんが演じられたのは、1974年に月組が初演した翌年、1975年の花組公演ですね。

安奈:私がやった前に上演されていたのはマリーアントワネット編です。私の時はオスカルとアンドレ編(サブタイトルとして「アンドレとオスカル」が追加された)でしたから、少し中身が変わりますよね。そうするとやっぱり、オスカルとアンドレのファンの人たちには「許せない」という気持ちがあったみたいで。手紙にカミソリが入っていたこともありました。

竹山:でも、舞台をご覧になれば皆さん納得ですよね。あれだけのブームになり、もはや古典作品といえるのではと思うほど、スタイルがそのまま引き継がれていく作品ですから。

安奈:それに関われたことは、私の人生の中でも良かったことの一つだと思います。けれども、それだけが私にとって特別ではないんですよね。いろんな役をやって、オスカルも好きでしたが、他にも好きだった役があります。またオスカルという役は、その後もいろいろな方がおやりになっていますから。

あの頃の作品とは少しずつ変化 「ベルばら」は今や忠臣蔵に?

竹山:またそろそろ、新しい「ベルばら」を見たいという機運も高まっているんじゃないかなと思います。

安奈:再演はいいと思いますが、原型のものからだんだんと変わっていますよね。私たちが演出していただいた長谷川一夫(元時代劇スター。初演を含む1970年代の「ベルサイユのばら」全作で演出を手がけた)先生や振付の喜多弘さん、音楽の寺田瀧雄さん、皆さんお亡くなりになりました。盛り立てていただいた上級生たちもほとんどいらっしゃらない。少し形容しがたいけど、私たちには「この作品に出られて良かった」という大感激みたいなものがあったわけです。

 だから、再演されたものを観に行っても、あの頃の作品とは少しずつ変化しているなという感じがしてしまうのね。でも、お客様にとってはそれでいい。「ベルばら」は今や、忠臣蔵みたいなものですから。

竹山:そうですね。「ベルばら」といっても、外伝などの作品(「外伝ベルサイユのばら」シリーズ)も上演されました。

安奈:それを初めてご覧になる方が「素晴らしいね」と思われたら、それはそれで良いことです。でも、あの初演の辺りの何とも言えない雰囲気は、望むべくもないかしら……なんて勝手に思っていますけどね。

竹山:世の中の流れやさまざまな条件が揃っていないと、なかなかできないのかなと想像します。

安奈:オスカルを涼風真世(月組・67期)さんがやったり、アンドレを杜けあき(雪組・65期)さんがやったり、天海祐希(月組・73期)さんだったり……。涼風さんや杜さん、一路真輝(雪組・68期)さん辺りは、私がやったのを観て宝塚に入られた年代なんですよ。

 先日、お仕事の時に下級生が来て「涼風さんたちがやったのを観て私たち宝塚に入ったんです」という方がいたんです。その涼風さんたちは、私たちがやったのを観て宝塚にお入りになった。そうやって綿々と続いているんですよね。だから「宝塚は不滅」だと言われるんです。

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