仕事・人生
座右の銘は「愚公移山」 28歳で起業したエニタイムズの挑戦は社会の課題解決とビジネスの両立
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終わりのない社会課題を解決するためには細く長く
サイバーエージェントで実務を学び、野村證券時代の経験が起業の原動力になったという角田さん。
「私にとって挫折というか、いわゆる苦しい状況のときのほうがいいアイデアが生まれて、そのあとグッと成長できたりするんです」
ネガティブな経験のあとに、必ずポジティブなことが起こる。だから、一定期間ネガティブなことがないと「逆に不安になります」と苦笑いします。
会社を立ち上げて10年。スタートアップといえば太く短くというイメージがありますが、「私たちの場合は細く長くみたいな感じなんです」と角田さんは言います。それは、彼女の座右の銘が「愚公移山」だから。これは、信念を持って地道に努力を続けていけば成功するという中国の故事から生まれた言葉で、角田さんの親友のお母さんから贈られた言葉なのだそうです。
「スタートアップという言葉すら知らなかったのに、一歩一歩、着実にやることってすごく大事だなって、今は思っています。会社を立ち上げてから厳しいこともたくさんありましたが、ギリギリの状態ながら10年間ずっと続けてきて、『塵も積もれば山となる』ということを実感しているところです」
そんな角田さんには、最近うれしいことがあったそう。それは、エニタイムズで仕事をしているサポーターさんから「エニタイムズによって人生がいい方向に大きく変わった」と直接言われたこと。「ビジネスとしては低空飛行だったんですけど、そういうサポーターさんが出てきてくれたことが本当にうれしいです」と、これからも一歩一歩、進んでいきたいといいます。
社会の課題解決とビジネスを両立させることは容易ではありません。それでも角田さんは、「持続可能なサービスの仕組みにするためには、ビジネスとの両立が必要不可欠」だと考えています。諦めるタイミングは「今までに何百回もあった」といいますが、プラットフォームはすでにできあがっており、「社長の私さえ諦めなければ、私ひとりでも事業は継続できる」という強い覚悟を見せます。
「結婚し、イタリアとの二拠点生活を始めたことで外側から日本を見て、新たな日本の良さや課題に気づけたこともあるんです。でも、まずは自分の身近な社会の課題解決をしていきたい。それを積み重ねていった先で、もともと自分が思い描いていた国際的な課題解決につながっていくんじゃないかなって思っています」
社会課題は次から次へと生まれ、終わりがありません。でも、着実に一歩ずつ前へ進む角田さんのやり方で、一つひとつ身近な課題を解決していけば、きっと世の中の課題も解決できるはずです。
東京都生まれ。慶應義塾大学法学部経済学科を卒業後、野村證券株式会社に入社。その後、サイバーエージェントへの転職を経て独立。2013年5月、28歳のときに自身の会社である株式会社エニタイムズを起業した。事業内容は「スキルのシェアリングエコノミー」。ちょっとした頼み事を依頼したい人と、空いた時間にちょっと仕事をしたいスキルを持った人とをマッチングするプラットフォームとなっている。その後、イタリア人男性と結婚し、昨年2月に第1子をイタリアで出産。現在はイタリアと日本を行き来している。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)