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お金

奨学金のタイプはさまざま 利用前に知っておくべきポイントとは FPが解説

公開日:  /  更新日:

著者:橋浦 多美

奨学金の返還開始時期や初任給を確認して、返済のイメージを鮮明に持つことが大切(写真はイメージ)【写真:写真AC】
奨学金の返還開始時期や初任給を確認して、返済のイメージを鮮明に持つことが大切(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「奨学金」とは、経済的な理由や家庭の事情で進学が難しい方に向けて、学費の給付や貸与を行う制度です。活用したいと思っていても、実際にどんな条件なのかがわからず、将来の返済などに不安を持っている人もいるかもしれません。ファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つフリーアナウンサーの橋浦多美さんが、お金に関する疑問に答えるこの連載。今回は「奨学金」について解説します。

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奨学金制度には3つのタイプがある

 日本で奨学金制度が始まったのは約80年前といわれていて、今では多くの学生が奨学金を利用し、高校や専門学校、大学、大学院、また海外の大学に進学をしています。では、奨学金とはどのようなものなのでしょうか。現在の奨学金制度には、給付型、貸与型、稼ぐ型の3種類があります。それぞれ見ていきましょう。

○給付型
 その名の通り「給付」される奨学金なので、返済が不要なタイプの奨学金です。返済がないという魅力的な制度ですから、学生からの人気は非常に高くなります。一定以上の成績を収めていることや指定された学校であること、家計や資産状況などの基準がありますが、返済を心配することなく安心して学生生活を送ることできるメリットはとても大きいです。これまで給付型の奨学金を採用している団体は少なかったものの、近年は少しずつ増加傾向にあります。日本学生支援機構も、2017年から給付型の奨学金を採用しています。

○貸与型
 貸与型は、給付とは違い返済義務がある奨学金のことです。返済の種類は2種類で、無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」があります。第一種は無利子なので人気が高く、審査基準もやや厳しくなります。第二種は年3%を上限として利子が付きますが、「一定以上の成績」「特定の分野でとくに優れた素質能力が認められている」「意欲があり、学業を確実に修了見込みである」からいずれか1つを満たせばいいので、一種に比べてハードルはさほど高くありません。給付型と違いあくまでも借りているお金ですから、貸与額には注意する必要があります。卒業後の生活も踏まえて、返済は計画的にしていくべきでしょう。

○稼ぐ型
 稼ぐ型の奨学金は、主に「新聞奨学金」です。新聞販売店での配達や集金、チラシの折り込みなどの業務をすることで、新聞社が学費の一部もしくは全額を支給するシステムです。奨学金部分は、返さなくていい場合と返済が必要になる場合があります。また、働いているので、学費とは別に給与も支払われます。制度によっては住居や食事、通学定期の補助といったサポートもあります。各社説明会などを行っていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

奨学金を借りている人の割合 借りた金額や返済額、期間は?

 では、実際にどのくらいの人が奨学金を受給しているのでしょうか? 独立行政法人「日本学生支援機構」が2020年度に行った「学生生活調査」によると、短期大学(昼間部)に通う学生の56.9%がなんらかの奨学金を受給しており、学校区分別で見るともっとも利用者の割合が多いことがわかります。次いで大学院の博士課程が52.2%、大学(昼間部)が49.6%となっており、2年前の調査に比べると大学、短大、大学院修士課程でいずれも利用者が増加しているようです。

 また、労働者社会福祉協議会が2019年に発表した「奨学金や教育費負担のアンケート調査」によれば、39歳以下で学生支援機構の奨学金を利用した人の平均の借入総額は324万3000円。毎月の返済額は平均で1万6800円で、返済の期間は平均で14.7年となっています。また、借入総額が500万円を超える利用者は12.4%と、1割を超えていることがわかりました。この結果からも、返済は楽ではないことが見て取れます。

 学費はもちろん、アパートや寮などで下宿生活を送る場合には生活費などもかかることから、借りる金額がかなり大きくなることがあるのです。