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スマホに夢中で育児放棄…「スマホネグレクト」が子どもの発達に及ぼす影響 子育て世代4人に1人が兆候
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いまや日常生活に欠かせないツールとなったスマートフォン。子育てにおいても、情報収集や知育アプリの利用、さらに子どもの気をそらせるために動画を見せるなど便利で必要不可欠なツールですが、一方で親がスマホに熱中して子どもの相手をしない「スマホネグレクト」が新たな問題として指摘されています。スマホネグレクトとはどういったもので、発達段階の子どもにどのような影響を及ぼすのでしょうか。発達心理学の研究や子育て支援を行っている専門家の先生に話を聞きました。(取材・文=Creative2クロスメディアチーム・佐藤佑輔)
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スマホネグレクトは親自身や周囲が気づきづらいのが特徴
スマホネグレクトとは、親がスマホに夢中になるあまり、子どもを放置したり無視したりといったネグレクト(=育児放棄)の状態に陥ってしまうことを指す造語です。スマホやSNSが広く普及し、日常生活のうちの多くの時間を割くようになった10年ほど前から問題視されるようになりました。
身体的ネグレクトや医療的ネグレクトなどとは違い、親自身や周囲がネグレクトの事実に気づきにくいという特徴があります。スクールカウンセラーの経験もある明治大学文学部の諸富祥彦教授は、「子育て世代の4人に1人はスマホネグレクトの兆候がある」と分析します。
「ひとつの基準は、子どもが『自分は親に放置されている』と感じているかどうか。とくに小学校入学以前、0~6歳くらいまでは心の土台作りのための大切な期間で、この時期に親から適切な愛情を受けずに育つと自己肯定感が育たず、人との関係を築くのが苦手な子に育ってしまいます。しっかりとした実態調査があるわけではないですが、SNSが普及したここ5~10年の間に顕在化してきた問題と言えます」
将来にわたり深刻な影響を及ぼす可能性も
スマホネグレクトが引き起こす問題のひとつが、子どもが自分の欲求や感情をうまく伝えられないまま大人になってしまう愛着障害です。諸富教授は、幼いときに親から愛されなかった経験が将来にわたり深刻な影響を及ぼすと指摘します。
「たとえば、惨めな状態でいることに浸ったり、DV(家庭内暴力)などのぞんざいな扱いをしてくる人を好きになってしまったり、逆に大切にされると居心地悪く感じて逃げ出してしまったり。依存症になったり、自傷行為に走ったりすることもあります。愛着障害に一度なってしまうと、きちんと愛されるという経験を重ねたり、人と信頼関係を築いたりできるようになるまで長い時間がかかります。カウンセラーや学校の先生などを通じて、もう一度育て直してもらうということが必要になるのです」
目まぐるしく情報が行き交う現代社会では、子育ての最中であってもメッセージのチェックや各種手続き、ネットショッピングなどでスマホが手放せないという場面も実際にあります。ただ、子どもは親の愛情が十分ではないことに敏感です。最初は子どもがかまってほしいと親の関心を引こうとしますが、しだいに声がけしなくなり、ひとりで遊ぶことが増加。こうした状態がエスカレートし、無意識のうちに習慣化してしまうと、スマホネグレクトの危険が高まります。