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ユニークな「農業」「観光」「移住促進」が地域活性化のキー 元記者が「地域おこし協力隊」退任前に考える

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

毎年、多くの方が参加するワインブドウ栽培の収穫【写真提供:芳賀宏】
毎年、多くの方が参加するワインブドウ栽培の収穫【写真提供:芳賀宏】

 長野県立科町へ移住して3年目になる、元新聞記者の芳賀宏さん。現在は「地域おこし協力隊」の産業振興担当として活動しており、その様子や地方移住のリアルを連載という形でお伝えしてきました。最終回では、地方地域が抱える課題解決に向けて、実際に今どのような取り組みを行っているのかについて、改めてお伝えします。

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「地域おこし協力隊」で知った現実 農業には地域活性化のパワーがあるはず

 立科町の「地域おこし協力隊」として、3年の任期が残り1年を切りました。振り返れば2年間はあっという間で、この先は学んだものをいかに還元していくか考えています。

 町側から明確な担務を指示されたことはなく、むしろ自分からやるべきことを探してやってきました。28年間続けてきた新聞記者という仕事が“虚業”なら、この町で出会ったリンゴやワインブドウの農作業はまさしく“実業”。経験上、話を聞けば「わかったつもり」になって、人に伝えることはできます。しかし、炎天下での気が遠くなるような作業や収穫までの緊張感、リンゴが売れた充足感やワインブドウが製品になった感慨は、実際にかかわらないと味わうことはできません。同時に、現場に立ったからこそ見えてきた現実もあります。

 日本全体の人口減少が続き、過疎認定された町を活性化するキーは何かあるか? そのひとつに、農業があるのではないかと考えています。農林水産省の統計では、2020年の就農者は約136万人。10年前から70万人近く減り、しかも65歳以上が約70%を占めています。立科町のリンゴ農家にとっても後継者不足は深刻です。

 さらに、今年は4月上旬の気温が高くリンゴの花が例年以上に早く咲いたため、同月末の霜や低温被害によって花が落ちてしまい、ほとんど実が付いていない木がたくさんあります。一昨年も「数十年に一度の被害」と聞いたのですが、今年はそれ以上といわれており、立科町だけで約1.5億円の被害を想定しています。環境変化への対応は急務ですが、この事態で離農者がさらに増えてしまわないか心配です。

「後継ぎがいないから木を切る」という方や、収穫の見通しを憂慮し「アルバイトをしないと暮らせない」と沈痛な表情を浮かべる農家さんもいます。現実と向き合い、今こそ何をすべきかを考えることが必要だと痛感します。

移住者によるユニークな事業が立科町に続々登場 「農業」「観光」「移住促進」は三位一体

 たとえば、立科町の名産であるリンゴについては、まだやるべきことが数多くあると実感させられました。昨年12月に東京・青山の「ファーマーズマーケット@UNU」に出店したのは、リンゴの価値を高め、ブランディングのための第一歩でした。大消費地である東京での知名度を上げ、数多くの産地のなかから「立科町のリンゴ」を選んでもらう。さらに、そうなることでリンゴ農家の後継者や新規就農者が増えることにもつながるのではないかという思いもありました。

 多くの人に立科町を知ってもらい、足を運んでいただき、地元の産品を買っていただく。願わくは、その先に移住や就農を考える人がひとりでも多く増えてほしい。「農業」「観光」「移住促進」は三位一体であると私が考える理由は、すべてつながっているからなのです。

 立科町の公式SNSやプレスリリース、ふるさと納税などへのアドバイスはもちろん、この連載も町の知名度を上げるための活動のひとつと言えるでしょう。一緒にやってきた若い職員がさらにスキルアップしていってくれたら、町は活性化すると信じています。