仕事・人生
東大から林業の道へ チェーンソーを手に森と向き合う決意をした30代女性の原点
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さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。離島を除く東京都内で唯一の村・西多摩郡檜原村に本社を持つ「株式会社東京チェンソーズ」に入社当時、唯一の女性社員として飛び込んだ飯塚潤子さんにお話を伺いました。同社は森林の整備・管理をはじめ、木材を伐出して木のおもちゃや日用品の製造販売、また森林サービスなど「森林の価値最大化」を目指してさまざまな取り組みを行う会社です。東京大学(以下、東大)で森林について学んだ飯塚さんが、都心部から移住して同社でやりたいと思った理由とは。前編は、学生時代から入社までについてです。
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1年浪人して東大に合格 農学部で学んだのは森林政策学
生まれ育ったのは茨城県の学園都市・つくば市。1985年に科学万博が開催された場所であり、その2年後に地域の市町村が合併して誕生したのがつくば市でした。整備された街には筑波大学があり、父親が大学で教えていたこともあって学びの環境には恵まれていました。しかし、飯塚さんは「外に出たかった」と振り返ります。
「実は日本の大学にあまり興味がなくて、海外の大学に行こうと思っていたんです。なんとなく海外の大学のほうがすごく勉強するイメージがありました。それで英会話スクールの体験に行ったりしていましたが、それが親にバレて『何もないのに海外に行ってもしょうがないでしょ』と。そのときに父から、『東だったら東大、西だったら京大(京都大学)が知識の集積の頂点だよ』という話を聞きました。それで、じゃあ東大を目指そうかなと思ったんです」
在籍していた高校は県内で進学校の部類ではあったものの、東大を目指す人は学年トップのわずかな人たち。当時は、東大を目指すなら部活動もアルバイトもせず、勉強一筋でないと合格できないといった風潮がありました。
「私は全然そんなタイプじゃなかったので……。『部活やバイトをやっていても東大に行けるぞ』と、やってやろうというチャレンジ精神でした」
1年間の浪人の末、東京大学理科二類に見事合格。高校時代から環境問題に関心があった飯塚さんが入学後に選んだ専攻は、農学部森林環境科学でした。
森林と人間社会とのつながりを、あらゆる面から研究する森林政策学の研究室に入った飯塚さん。環境NPOに参加する若者がどういうきっかけでエコ意識を持ち、エコ行動につながったのか。さらに、そういった若者がもっと森林に関心を持ち、エコ行動につなげるためにはどうしたらいいのかを卒業論文にまとめたといいます。
「砂漠化や熱帯雨林の破壊といった問題への意識から、現在の日本国内の森林が抱える課題に興味が移っていきました」