仕事・人生
YouTubeで話題の“ツナ娘” 20代後半で水産業界に飛び込んだ理由は「父への恩返し」
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目の前に置かれた大きなマグロを手際良く、慣れた手つきでいとも簡単にさばく若い女性。水産業界では珍しいこの姿が、多くの人の目を引いています。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回はYouTubeチャンネル「ツナ娘チャンネル」で地元の和歌山県東牟婁(ひがしむろ)郡那智勝浦町をアピールしている“ツナ娘”こと、脇口みづほさんの前編です。大阪で会社勤めをしていた脇口さんは、なぜ家業である「脇口水産」の手伝いを始めたのでしょうか?
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コロナ禍が大きなきっかけに 会社員から家業の脇口水産へ
「始めは顔出しするつもりも、YouTubeをするつもりもまったくなかったんです」と語る脇口さん。顔出しには当初、抵抗があったのだそう。それでも、覚悟の上で動画出演を始めました。
「キャラクターを売っていくのであれば、YouTubeに出た方が早いですからね。だから出ることにしたんです」
とはいえ、脇口さんは元々キャリア志向が強く、以前は大阪で会社員として仕事に熱中していました。
「大阪の大学を卒業してから約6年、普通にサラリーマンとして働いていました。『出世していろいろなことに挑戦したい』というキャリア志向のタイプでしたね。でも、会社が少し大きかったこともあり、正直に言うと“言われたことをやる”という割と退屈な毎日を過ごしていたんです。27歳か28歳の頃、年齢的にも『何かに挑戦するんだったらここが最後なのでは』と思っていました」
それはちょうど、新型コロナウイルスの流行が始まった頃。脇口さんはクロマグロが売れなくなり、価格が暴落しているというニュースを目にしました。
「これまで家業の問題については、聞いたことも考えたこともあまりなかったのですが、ニュースを知って『当たり前のようにあった家業がこれからどうなっていくんやろう』と考えるようになりました。
そこで脇口水産の社長でもある父からいろいろな話を聞くうちに、『ならいっそのことこのフィールドに飛び込んでみようかな』と。私くらいの年齢で、かつ女性は水産業界に少ないので、そんな私だからこそ何かできることはないかと考えて、思い切って飛び込みました」
脇口水産は社員約40名を抱える中小企業で、平均年齢は50歳超。脇口さんの兄が継ぐ予定です。脇口さんには「ここまで育ててくれた家に恩返しもしたい」という思いもあり、家業の手伝いを決めました。