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仕事・人生

東大から林業に従事する2児の母 森の仕事で伝えたいこと

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

ウッドデッキがある会社の施設内で森林について語る飯塚さん【写真:Hint-Pot編集部】
ウッドデッキがある会社の施設内で森林について語る飯塚さん【写真:Hint-Pot編集部】

 さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。東京大学(以下、東大)農学部で森林について学んだ飯塚潤子さんは、まだまだ男性が多く従事する林業の会社「東京チェンソーズ」に入社しました。女性でも「チェーンソーさえしっかり持てる腕力があれば大丈夫。問題ないです」と力強く語る飯塚さん。前編では大学を卒業してから東京チェンソーズに出会うまでを、そして後編では現在の仕事について伺いました。

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飛び込んだ女性ひとりの職場 現場からバックオフィス、営業企画など多岐にわたる業務を経験

 飯塚さんは東大農学部で森林について学んだのち、国際見本市主催会社に就職。1社目を4年で退職すると、林野庁の外郭団体を挟んで、東京都西多摩郡檜原村にある東京チェンソーズに転職を果たしました。

 入社当時は林業の最前線の現場を担当する林業事業部に配属され、春には地下足袋をはいて苗木を山に植える「植え付け」を、夏には苗木の周りに生えた雑草を刈払機で刈る「下刈り」を行いました。そして秋冬になると、枝を幹から切り落とす「枝打ち」や林内の樹木の密度を調整する「間伐」を行ったそうです。

 成熟した一本の木に成長するまでには、約60年かかるといわれています。その一本の木から流通に乗せられる部分は約25%しかなく、原価はわずか1万円ほど。しかし、山で木を育て、伐採・製材し、消費者の手に渡るまでには多くの職人たちの手が加えられ、手間暇がかかります。補助金なしでは、とても事業として成り立たないのが現状なのだそう。

「最初は現場で働いていて、檜原村からの委託業務でイベントを行ったりもしました。その後、結婚し、妊娠したのを機に山から離れ、イベントの調整業務や新規事業の立ち上げ準備をするように。また、産休・育休などの社内規定を整理する労務など、いろいろなことを行ってきました」

山の恵みを伝えるグッズ開発に携わる

 東京チェンソーズに入社して10年。2児の母になった飯塚さんは現在、販売事業部でオンラインストアの運営や会社全体の広報を担当しています。

 コロナ禍でイベントがストップしたときに新たに始めたのが「山男のガチャ」。「バードコール」や「マグネット」「ペン立て」など、普段は捨てられてしまう枝や細い丸太などの素材「一本まるごと」をいかして作られたグッズを、カプセルに入れたガチャガチャです。

 また、入社後に現場作業をしていた頃、現場で感じるさまざまな自然の匂いを心地良く感じた飯塚さんは、この香りをお裾分けできないかと考えました。そうした作られたのが、「Life!」と名付けられたアロマオイルです。

「私たちも生き物で、木も生き物です。林業という仕事は、木の命をいただいている。山は生き物にとってすごく大事な場所なので、その息吹を感じてもらいたいと思って『Life!』と名付けました」