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仕事・人生

東大から林業に従事する2児の母 森の仕事で伝えたいこと

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

森林に関心を持ってもらえるよう斬新な取り組みにチャレンジ

 東京チェンソーズでは、ほかにも体験イベントを行っています。30年の年月をかけて3本の苗木を育てる体験型プロジェクト「東京美林倶楽部」や、「6歳になったら机を作ろう」という学習机作りときこり体験がセットになったイベントなどです。

 飯塚さんは、いろいろな人がさまざまなきっかけで森林に関心を持ってくれたらと考えており、ガチャガチャやイベントはそのための「きっかけのひとつ」だといいます。

「学生時代、卒論執筆のために『グリーンバード』というゴミ拾いを行うNPO団体の活動に、ほぼ毎週のように参加していました。。そこでは、ゴミのポイ捨てがかっこ悪く見えるように、ゴミ拾いを楽しくおしゃれに見せるための工夫を行っていました。そういった、ちょっと違った切り口から森林に興味・関心を持つ人を増やすことが大事なんじゃないかなと思うと、広報や商品開発、販売をしていくなかでやれることはまだまだたくさんあると思っています」

仕事は「自分が楽しくないと続かない」 決断の決め手は第六感

 今、檜原村の主導で一緒に取り組んでいるのが「檜原村トイビレッジ構想」。会社がある檜原村は、東京都本土内で唯一の村。「おもちゃ工房」や「檜原森のおもちゃ美術館」を設立し、いろいろな世代の人が親しみやすい「木のおもちゃ」を使って、産業と観光の二軸で「檜原村を日本一の木のおもちゃ村にしよう」というプロジェクトです。

「山や森林と私たちの生活って、ちょっと分断されていますよね? 普段、美術館に行くような感覚でふらっと森へ来る。そういった、少し森林を身近に感じてくれる人を増やしていきたい。そして、そのどこかでマネタイズできればいいのかなと。そのためには、違った発想で企業としての収益を上げていく必要があります。持続可能な林業を行うことで、山には美しい緑があって、おいしい水と空気を町に送り出すことができると思います」

 国土の3分の2を占める森林地帯を「いかさないのはもったいない」と思っていた飯塚さん。仕事で、多くの人に森林について興味を持ってもらうためのアイデアや企画を考えるときは「ワクワクする」と楽しそうに語ります。

 そして、「自分が楽しくないと続かない」とも。だからこそ、森林をいかす仕事をしている今は「やりたいことのど真ん中をやれているので幸せ」なのだとか。それは、好きなことを仕事に選んだ理由に通じます。

「仕事をしていなくても、寝る前とかごはんを食べたあとのちょっとした空き時間とかに、つい仕事のことを考えちゃったりするじゃないですか。だったら自分の好きなことを仕事にしたいって思ったんです。充実する時間が人生でちょっとでも多いほうが楽しいなって」

 少し照れながら「この会社で楽しく過ごせています」と語る飯塚さん。これまでもそうだったように、きっとこれからも「ビビビ」と感じる第六感を信じて人生を選んでいくに違いありません。

◇飯塚潤子(いいづか・じゅんこ)
茨城県生まれ。林業には無縁の学園都市・つくば市で育ち、東京大学理科二類から農学部森林環境科学に進学。森林政策学研究室に所属。大学卒業後は国際見本市を主催する会社で主にセールスプロモーションに従事。その後、転職を考えていた時期に東京チェンソーズの書籍に出会い、「ビビビときた」と入社を決意する。1年間の林野庁外郭団体の契約職員を経て、29歳で東京チェンソーズに入社し、念願だった林業の世界へ。現在の夫と出会い、2015年に結婚。東京都本土で唯一の村である檜原村に移住し、現在は2児の母として子育てに悪戦苦闘しながら日々、楽しく仕事をしている。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)