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BTSファンの聖地 ソウル中心部からも気軽に行ける韓国式登山とは
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下山後の楽しみはなんといってもチヂミとマッコリで“打ち上げ”
こうした名山へのハイキングは、山に登ることだけが楽しいのではありません。本当の楽しみは、なんといっても下山後の会食。仁王山から景福宮駅方向に下山すると「西村(ソチョン)ビレッジフードストリート」という通りがあり、各飲食店で“打ち上げ”と称した飲み会が始まります。定番メニューはチヂミとマッコリ。この瞬間を堪能するために、わざわざ汗だくになって険しい山を登ったり下ったりするのです。
「ダイエットになりますね」と愛好家に聞くと、「下山後はマッコリをたっぷり飲んで爆食いするので、体重が1キロは増えます」と笑っていました。
在ソウル日本人女性を集めた登山の会を主宰する、ソウル在住15年で韓国大手旅行情報サイト「コネスト」の元編集長・大國徳子さんはソウル市民の登山好きについて、「山登りが身近なレジャーになっているのは立地が大きく関係している」といいます。
「北漢山や道峰山をはじめ、すべての山がソウル中心部から地下鉄で1時間圏内。地下鉄の駅から徒歩でアクセス可能な登山道がたくさんあります。標高が低いので特別な装備は必要なく、登山靴さえあれば半日から1日の日帰り登山を気楽に楽しめます。時間もお金もかからないので、誰にとってもチャレンジしやすいのです。のんびりしたい人は頂上まで行かずに整備された散策路を歩くも良し。本格的な登山を楽しみたい人は、アップダウンを繰り返す岩山ハードコースにチャレンジしても良し。“映え写真”を撮りたい人は最短コースでいいとこ取りをしてもいいでしょう」
また、99%の確率で「日本人ですか?」と声をかけられるそうで、「地元の登山客はみんな人懐っこくて、外国人が山を訪れることに対して歓迎ムードです。写真撮影をお願いすると、頼んでもいないのにポーズや背景に指示出ししてくれるなど、撮影にこだわってくれる人も多いです。このように現地の人との交流も期待できます」と語ります。
大國さんによると、運動靴でも可能なハイキングなら仁王山、登山靴を履いての本格登山なら北漢山がおすすめとのこと。仁王山は頂上までのんびり歩いて1時間ほどでソウル市街を一望できますし、朝鮮時代の城壁(復元含む)や朝鮮半島の南北対立の歴史など、史跡散歩も同時に楽しめます。一方、北漢山はルートが豊富なのでソウル都心登山観光センターで案内を受けるか、センター主催の無料ツアーもあります。有料ですが、登山靴や登山服のレンタルもあるそうです。
「日本の有名な山に比べると標高が低いので、簡単に考える人もなかにはいますが『所変われば品変わる』で、ソウルの山にはソウルの個性があります。都心に近いからこその利便性と、都心とは思えない自然、昔から画題にされてきた山容の美しさをぜひ味わってほしいですね」(大國さん)
(鄭 孝俊)
鄭 孝俊(てい・こうしゅん)
元全国紙記者。在職中に東京大学大学院に入学し、仕事の傍ら研究生活に入る。文化人類学やメディア論に関心を持ち、韓国エンターテインメントとファン行動について論文を執筆。専攻は日韓メディア比較論。日本や韓国だけではなく、東南アジアの伝統芸能や食生活にも関心を寄せている。