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見た目の「美」はステータス “美容大国”韓国の今 施術時に日本人が注意すべきこととは

公開日:  /  更新日:

著者:鄭 孝俊

韓国に根付いた美容整形 メスを入れない施術も韓国では安価

 メスを入れる本格的な手術で顔面を“工事”するのはちょっと……という方でも、顔のシミ取りや肌のハリ、ツヤの施術で美肌を取り戻したいのでは。こちらの予算も日本よりも安上がりのようです。

「出力の弱いレーザーをシャワーのように照射してメラニン色素を減らすピコトーニングは、1回6万ウォン(約6000円)ほど、シミ取りレーザーなら1万ウォン(約1000円)でやってくれます。これくらい安いとコンビニ感覚で通院できますね。男性も気軽に受診しています。また、最近はスキンブースターの一種であるリジュランヒーラーという高濃度サーモン注射も人気です。これはヒアルロン酸やレーザーとは異なり、肌の自己回復力を高めてシワやハリを改善する施術です。日本だと2cc1回で4万円を超えるほどですが、韓国だと3万円ほどです」

 美容整形の“本場”江南以外のターミナル駅周辺にも、安価で腕のいいクリニックがたくさんあると聞きます。美容の施術や美容整形が韓国社会に根付いている理由について、ソウル在住15年で韓国大手旅行情報サイト「コネスト」元編集長の大國徳子さんはこう話します。

「韓国では、朝鮮時代から男性も女性も色白がいいとされてきました。日に焼けていない美しい肌は特権階級、反対に日焼けした粗い肌は肉体労働の庶民というイメージが根強いからです。したがって、現代においても男女問わず、肌の手入れ、韓国語で『皮膚管理』に神経を使うことは“エリートの証”もしくは“たしなみ”と言えます。スペック重視の韓国では見た目もそのひとつで、就職に備えて整形するということも珍しくありません。美容施術や美容整形を単純に『美』としてとらえるのではなく、『ステータス』と見ていることが根底にあるのではないでしょうか」

日本人が韓国で施術を受ける際の注意点とは

 それでは、日本人が韓国で手術を受ける際、気をつけることはなんでしょうか。

「日本と比べて安価ですし、美容施術や美容整形の専門分野が細分化されているので、自身にあったサービスの選択肢が多いことや日本語のサポートが充実していることはメリットです。しかし韓国は海外なので、何かあった場合に施術や手術を受けた病院へすぐに行くことができません。また、サービスやスタッフの対応が日本と違うことには留意が必要です。

 各クリニックも日本人向けのサービスを研究してはいるものの、通訳を介するのでコミュニケーションエラーが起きやすいです。日本語が堪能なスタッフでも、デリケートに感じる部分は人それぞれであるうえに、どうにも感覚が違うという文化の違いがあるので、些細な行き違いから感情的なトラブルに発展することもあります。最初のカウンセリングをはじめ、納得がいくまでとことん確認や話し合いをすることが必要でしょう」

 なお、韓国での美容整形は原則として自費診療で保険はききませんが「外国人の場合、3万ウォン(約3200円)以上の美容サービスが免税対象になります。二重手術やシミ治療など、対象項目が決まっているので病院で確認を。免税手続きができるのは、自治体に外国人患者誘致医療機関として登録されている病院です」と大國さん。

 また、韓国在住の日本人駐在員の間ではシミ取りなどの肌ケアが大人気だといいます。

「日本にいれば、美容クリニックには決して足を運ぶことはなかったであろうおじさま方が嬉々として肌の手入れをしています。韓国人同僚や韓国人の知り合いから話を聞いたり、病院の紹介を受けたりするうちに『一度“体験”してみたら意外に良かった』という人が大多数です。美を磨いて、心が浮き立つのは性別も年齢も関係ないようですね」

 日本人のおじさままで虜にする韓国の“皮膚管理”思想。さすが、“美容大国”なだけのことはありますね。

(※文中の費用は、為替レートの変動や各医院によって異なります)

(鄭 孝俊)

鄭 孝俊(てい・こうしゅん)

元全国紙記者。在職中に東京大学大学院に入学し、仕事の傍ら研究生活に入る。文化人類学やメディア論に関心を持ち、韓国エンターテインメントとファン行動について論文を執筆。専攻は日韓メディア比較論。日本や韓国だけではなく、東南アジアの伝統芸能や食生活にも関心を寄せている。