からだ・美容
気管支炎や肺炎などを繰り返す…生まれつき免疫が低い疾患の可能性も 医師が解説
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教えてくれた人:金兼 弘和
PIDの治療とは?
医療機関を受診し、もしPIDと診断されたらどのような治療を受けるのでしょうか。
「早期治療で発症や進行を抑えることができるPIDに共通する治療には、次の3つがあります」
1. 感染症に対する適切な抗菌薬の投与
2. 疾患に応じて抗菌薬の予防内服
3. 症状に応じて免疫抑制薬などを処方
「PID患者においては、血液中を流れる、肝臓で作られるたんぱく質の主成分のひとつの『免疫グロブリン』が少ししか作られないことが原因で易感染性を示す場合も。その場合は、免疫グロブリンを補充する療法を施します。病院で行う点滴静脈注射と、自宅で行う皮下注射があります。多くのPID患者さんは、この免疫グロブリン補充療法や抗菌薬の予防投与により、通常の社会生活を送れるようになることが期待されます」
大人になってもPIDと診断されないことも
PIDはまれな疾患であるため、大人になってもPIDだと気づかず、感染によるさまざまな症状に苦しんでいる人が多くいるといいます。
「PIDは、成人になっても診断のつかない方が多くいます。未診断の患者さんは、感染症が悪化したときに生命に危険が及んだり、難聴や気管支拡張症などの後遺症が残ったりすることも。また、適切な診療を受けられずに仕事や社会生活を十分に送ることができないケースも多くみられます」
PIDを見逃さないためには、早期発見・早期治療が重要だといいます。
「難病センターと小児慢性特定疾病情報センターの情報によれば、現在診断のついたPID患者数は2500名を超えるものと推定されます(※1)。また成人患者(20歳以上)に限ると、1908名が特定医療費受給者証を持っています(※1)。一方、PID患者は出生1万人あたりに1人の割合で生まれる(※2)と報告されており、診断されていないPID患者さんが多くいると推定されています。重篤な症状に至らないよう、早期に適切な治療を受けることが望まれます。適切な治療を受けるために、未診断患者さんの早期受診・早期診断が求められています」
もし金兼教授の解説を読み、チェックリストにも心当たりがあったなら、お近くの病院受診することを検討してはいかがでしょうか。
(※1)難病センター:令和3年度末現在特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、小児慢性特定疾病情報センター:小児慢性特定疾病児童等データベースへの登録状況(2018年度)
(※2)難病センター:原発性免疫不全症候群(指定難病65)
(Hint-Pot編集部)
金兼 弘和(かねがね・ひろかず)
東京医科歯科大学大学院小児地域成育医療学講座教授。日本免疫不全・自己炎症学会副理事長。NPO法人PIDつばさの会代表医療顧問。1991年、金沢大学医学部大学院医学研究科修了。2014年、東京医科歯科大学大学院発生発達病態学分野(小児科)准教授。2018年、東京医科歯科大学大学院小児地域成育医療学講座(寄附講座)教授。