近年、美容医療は身近なものとなり、切らずにできる「プチ整形」が人気です。とくに、化粧品よりも即効性があり効果も実感しやすいと、シワやたるみといったエイジングサインに対する美容医療のニーズが高まっています。ヒアルロン酸注入やボトックスはダウンタイムが短く、エステ感覚で受ける人が増えているようですが、この手軽さがリスクにつながることも……。気になっているけれど、正解がどうもわからないという健康や美容の疑問を医師が解説する連載。今回は、美容医療におけるエイジングケアの注意点について、美容形成外科の佐藤卓士医師に伺いました。

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弾力が失われた皮膚を内側からふっくらさせるのが「ヒアルロン酸注入」

　加齢や乾燥、紫外線ダメージによって肌のみずみずしさや弾力が失われ、ピンと張っていた皮膚がたるむとシワができます。表情筋の衰えもシワにつながるなど、シワの原因については、本連載の「老け見えの原因・シワを改善するコスメ　購入時に注目すべき成分とは」のなかでお話ししました。

　しぼんで枯れた肌にヒアルロン酸を注入することで、内側からボリュームを出しほうれい線やマリオネットライン、目元のシワを目立たなくします。ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分。保水力に優れ、みずみずしい肌を保つ役割があります。

　使用するヒアルロン酸には種類があります。シワの場所・状態に合わせて最適な製剤を選択し、注射で真皮の内側に注入。注入する量もシワの状態に合わせて調整し、シワが目立たないようにしていきます。処置後は注射したところが若干腫れて顔がむくむことがありますが、数日経てば治まるものです。

　ヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されていくので、時間の経過とともにシワが気になってくると思います。使用するヒアルロン酸の種類にもよりますが、半年から1年は効果が持続するので、効果がなくなる頃に再注入するのがいいでしょう。

額などの表情ジワにはボトックスが有効

　顔の表情を作るときに目尻や額、口元に寄るシワは、表情筋という筋肉の収縮によるものです。表情ジワは、長い年月をかけて同じ表情を繰り返すことで定着していきます。そのため深く刻まれていることが多く、化粧品だけではなかなか改善することができにくいシワです。

　そこで有効なのが、筋肉の緊張をゆるめるボトックスです。ボツリヌス菌から抽出した成分を皮膚に注入し、筋肉の動きを弱めてシワを目立たなくさせます。動きを完全に止めてしまうと、表情が作れない、まぶたが開けにくいといった弊害が起きますので注意が必要です。

　ボトックスの効果は約半年で、徐々に薄れていきます。また、すでに刻まれている深いシワをボトックスだけで完全になくすことは難しいでしょう。筋肉をゆるめることで、これからできる表情ジワを予防すると考えたほうがいいですね。