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レジ袋有料化、3年経つもいまだに「賛否両論」 意見分かれる背景にあるもの
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プラスチック製レジ袋の有料化から、7月1日で丸3年が経過しました。開始当時は環境問題に効果があるのか疑問視する声や、スーパーマーケットなど販売店でのクレーム増加を懸念する報道などが注目を集めましたが、実際のところどうなのでしょうか。そこで、小売業従事者1000人を対象にアンケートを実施。その結果から、それぞれの問題や今後について専門家が考察します。
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レジ袋購入者は減少するも…小売従事者はいまだ賛否が半々
アンケートは2023年6月5~6日に、10代から60代以上のYahoo!JAPANユーザー(小売業従事者限定)を対象に行われました。まずは、「レジ袋を購入する人は減少していると感じるか」についての設問を見ると、約7割の人が「減少した」と回答。一方で「レジ袋有料化に賛成か反対か」を問う設問では、「賛成」「やや賛成」は合わせて51.1%と約5割になりました。
理由の自由記述では、「環境に優しい」や「ゴミ削減につながる」「コスト削減」など肯定的な声がある一方で、「レジ袋を削減したところで効果はたかが知れている」や「会計で手間が増える」「レジ袋が必要かの確認が面倒」といった否定的な意見もありました。
レジ袋有料化から3年 いまだ賛否両論の理由とは? 専門家に聞く
レジ袋の有料化によって、プラスチック素材による環境破壊に問題意識を持ち、行動を変えるきっかけになった人も多いでしょう。賛否が分かれるのはなぜなのか、サステナビリティ・コンサルタントの安藤光展さんに話を伺いました。
――レジ袋の有料化は環境問題に役立っていると言えるのでしょうか?
「配布数が減っているのは間違いないので、『資源の有効活用(そもそも作らない)』に貢献しています。また、レジ袋製造時の環境負荷を減らせるほか、輸送時の環境負荷も減らせるなど、環境に貢献できている側面は大きいでしょう」
――今回、小売業従事者の方を対象にしたアンケートで、レジ袋有料化について賛否が半々という結果になりました。今後は変わっていくものなのでしょうか?
「とくに環境関連の施策は、100%の人が賛同するものはありません。自身の利便性を優先して考えているか、環境問題まで意識を高められているか、それぞれの考え方があるからです。今回の調査やほかの調査を見ても、賛成していない人の意見として『レジ袋の配布量が少し減ったところで環境は良くならない』『有料でも買う人が多く意味がない』などがあります。善悪は別として、これらの意見もまっとうなものです。賛成割合が高い低いより、行動変容(有料化により行動を変えた人)が起きた人が少なからずいるので、習慣になるまでは今後も反対意見が出ると思います」
――レジ袋有料化は個人の生活だけでなく、企業にも一定の変化をもたらしたといいます。具体的には、この3年でどのような状況になったのでしょうか?
「レジ袋有料化に加えて、プラスチック利用に制限をかける『プラスチック資源循環法』が2022年4月施行にされました。それにより飲食店のプラスチックストローが紙などの別素材になったり、アパレルショップでプラスチックの袋から紙袋に変更されたり、レジ袋を発端として企業側も今までの商慣習を改める動きがあります。世界の機関投資家の動き(ESG投資)もあり、企業はますます気候変動や資源循環の取り組みをする必要があるでしょう。投資家や政府からのプレッシャーで、企業も変化せざるを得ない状況になってきたのがこの3年間です」
――個人の意識を変えていくには、何から始めればいいのでしょうか。
「最近は、レジ袋の有無の話に寄りすぎているように感じられます。環境省がいう当初の目的である『プラスチックゴミ問題』という大命題に話題が及ぶことがまだまだ少なく、今一歩というのが現状の成果かと思います。しかし、レジ袋は二酸化炭素などと違い目に見えるものなので、取り組みがしやすい活動のひとつです。また、最近は環境負荷の低い製造方法で作られた服や、環境負荷の低い包装を使った食料品などが増えています。日々の買い物を通じ、環境負荷を抑える取り組みを積極的に行う企業を応援することもできます。日本の1億人の行動が変われば、社会全体の雰囲気も変えられるでしょう」