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95歳の祖父が孫のために集めた昆虫標本 “もらい手募集”が反響 「スーパーおじいちゃん」への感謝

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

95歳の祖父が集め続けた、トンボとチョウが収められた標本箱【写真提供:wanchan(@wanchan_air)さん】
95歳の祖父が集め続けた、トンボとチョウが収められた標本箱【写真提供:wanchan(@wanchan_air)さん】

 昆虫が大好きだった孫のために、祖父が長年続けてきた昆虫採集と標本作り。95歳を迎えた祖父の終活の取り組みとして、貴重なトンボとチョウが収められた標本箱のもらい手を募集するツイートが話題になっています。呼びかけた孫である33歳の男性は、自然とふれあった原体験から、現在はデザイナーの仕事の傍ら「エアプランツ」と呼ばれる植物を広める活動に従事しています。男性に思い出が詰まった標本箱にまつわるエピソード、そして尊敬してやまない「スーパーおじいちゃん」との人生の歩みについてお話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

「虫博士」の夢持った孫の原体験 90歳頃まで昆虫採集を続けた祖父

「祖父(95)のトンボ・チョウの標本箱をもらってくれる方いませんか? いよいよ終活となり、好きな子どもに譲れないかと祖父から相談を受けました。お子様のいるご家庭や小学校・幼稚園など、どなたか欲しい方いませんか?」

 今月2日に投稿された募集の呼びかけは、1.8万件の“いいね”を集め、大きな反響を呼んでいます。

 投稿主は、wanchan(@wanchan_air)さん。デザイナーであり、ティランジア(エアプランツ)専門の写真家チラグラファーとして、その魅力を日本中に広める活動をしているそうです。

 佐賀県が地元のwanchanさんは、物心ついたときから無類の昆虫好き。「いつも母を困らせていました。もちろん将来の夢は虫博士でした」と振り返ります。そんなwanchanさんを喜ばせようと、祖父はトンボやチョウについて独学で知識を蓄え、種類ごとの特性、捕まえるための網の振り方、標本の作り方、価値を損なわないための学術的なデータラベルの書き方などを教えてくれたといいます。

「夏休みになると毎年、『トンボ教室』と呼ばれる、かつて佐賀県が主催していたキャンプにも連れて行ってくれました。あの頃の私にとって、祖父はまさに『スーパーおじいちゃん』でした」

 中学生になると昆虫採集をしなくなったそうですが、祖父は趣味のひとつとして90歳頃まで昆虫採集を続け、標本を作っては子どもたちにプレゼントしていたそうです。

「祖父は子どもの笑顔が本当に大好きなんだと思います。私はそんな祖父をとても尊敬しています。おかげさまで、その辺を飛ぶトンボやチョウの名前はほとんどわかるようになってしまいました。ある意味、虫博士の夢は叶ってしまったのかも(笑)」

手作りの紙箱まで入れると作った標本は30箱以上、推定500匹に

 wanchanさんは今でも生き物や植物といった自然が大好きで、キャンプの趣味を続けているとのこと。チラグラファーの活動は祖父の影響が大きく、「今思えば、自然とふれあったあの濃密な時間が私のなかの原体験として『自然に心を通わせる生き方』を選ばせてくれたのだと、とても感謝しています。祖父は今年95歳になりましたが今でも勉強熱心で、なんでも知っていて、とっても優しい『スーパーおじいちゃん』のままです」と、祖父への感謝の思いを聞かせてくれました。

 そんな祖父がコツコツ作り続けてきた標本。今回、家族で話し合って、ひとつの区切りをつけることを決めたそうです。

「祖父は10年ほど前から『自分がいなくなったときに捨てるしかなくなってしまうのが残念』『虫が好きな子どもに喜んでもらいたい』と言っていました。以前、祖父自ら小学校などに寄贈を申し出たことがあったようですが、そのときは断られてしまったらしいです。おそらく写真もなしに声をかけて、学校のみなさんに不審がられたのかもしれません。それに、私ひとりでは全部は受け取り切れないと思い、今回ツイッターでもらってくれる方の募集をかけました」

 今回取り扱うのは、二十数年前から最近までの標本。精査してみると、しっかりとした木製の標本箱は10箱程度あるといいます。全部でどれくらいあるのでしょうか。

「それ以外の手作りの紙箱まで入れると、30箱以上、推定500匹ほどあります」

 ちなみに、それ以前のものは半年に一度、防虫剤を入れ替えるなど管理の大変さもあって、かなりの量をすでに処分してしまっているそうです。