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「処暑」とは? 2024年はいつ? 旬の食べ物や「処暑の候」も解説

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

暑さが落ち着く処暑。稲穂がたれる(写真はイメージ)【写真:写真AC】
暑さが落ち着く処暑。稲穂がたれる(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「処暑」とは、季節の変化を知る目安としてきた二十四節気のひとつ。しだいに暑さが和らぎ始める頃です。穀物が実り始めますが、昔から台風が発生しやすいといわれる時期であり、激しい雨風に警戒する季節でもありました。処暑の由来や習わし、食べ物について解説します。

 ◇ ◇ ◇

    目次

  1. 処暑とは 読み方は
  2. 処暑の習わし、風物詩
  3. 処暑の七十二候 季節の移り変わり
  4. 処暑の食べ物

処暑とは 読み方は

 二十四節気のひとつである「処暑」は、「しょしょ」と読みます。二十四節気とは、太陽の動きに合わせて1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにその季節をそれぞれ6つに分けたもの。全部で24あり、古くより季節を感じる目安として用いられてきました。二十四節気は立春から始まり、処暑は14番目の節気です。

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○処暑の意味と由来

「処」には「止まる」という意味があり、「処暑」は文字通り「暑さが終わる」ことを意味します。日中はまだ蒸し暑さがありますが、朝晩に秋らしい涼しさを感じる日も多くなるでしょう。

○2024年の処暑はいつ?

 2024年は8月22日(木)から9月6日(金)です。

○「処暑の候」の使い方

 暦の上では秋となったものの、まだ暑さが残る処暑の頃に用いる時候のあいさつ。たとえば、この時期に送る手紙やメールの書き出しに「拝啓 処暑の候、お変わりなくお過ごしでしょうか」などと使います。

処暑の習わし、風物詩

 しだいに暑さが落ち着き始める処暑の頃。習わし、風物詩を見ていきましょう。

○伝統的七夕

星が美しい夜空(写真はイメージ)【写真:写真AC】
星が美しい夜空(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 2024年の伝統的七夕は8月10日。七夕といえば7月7日ですが、もともとは現在使われている暦ではなく、太陰太陽暦の旧暦7月7日に行われていました。梅雨の時期に重なることが多い7月7日よりも、星がきれいに見えるといわれています。

○秋の七草

ハギの花(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ハギの花(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 時折吹く秋らしい風に、草花たちが揺らぎ始めます。秋の七草とは、ハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウのことです。奈良時代の歌人として知られる山上憶良(やまのうえのおくら)が「秋の野花を指折り数えてみたら7種類あった」ことを歌(「万葉集」)に詠んだことから、秋の代表的な草花として広まりました。

○二百十日

収穫の無事を祈る祭りも(写真はイメージ)【写真:写真AC】
収穫の無事を祈る祭りも(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「にひゃくとうか」と呼ばれる雑節で、立春から数えて210日目を台風の警戒日としました。220日目の「二百二十日(にひゃくはつか)」(2024年は8月31日)、旧暦8月1日の「八朔(はっさく)」(2024年は9月3日)とともに「農家の三大厄日」とされています。台風襲来の予測ができなかった時代は、こうした厄日を設けて風を鎮める祭りなどを行い、収穫の無事を祈りました。

○地蔵盆

お地蔵様(写真はイメージ)【写真:写真AC】
お地蔵様(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 京都発祥といわれる仏教由来の行事。地蔵菩薩の縁日・8月24日を中心に子どもの安全や健やかな成長を願って行われます。地蔵菩薩像を水洗いし、化粧や前かけなどの飾りをしてお供えする、夏の終わりの風物詩です。

処暑の七十二候 季節の移り変わり

ガクが開き綿毛が飛び出す(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ガクが開き綿毛が飛び出す(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 二十四節気の節気(約15日間)を、さらに3つ(約5日間)に分けた季節の目安を「七十二候」といいます。日本特有の季節の移り変わりを感じ取ることができる、古来伝わる区分です。処暑の七十二候を見てみましょう。

○初侯 綿柎開(わたのはなしべひらく)

 8月22日頃。綿の実を包むがく(はなしべ)が開き始める頃です。がくが弾け、ふわふわとした綿毛が中から飛び出してきます。

○次侯 天地始粛(てんちはじめてさむし)

 8月27日頃。「粛」は鎮まるという意味です。ようやく暑さが落ち着く頃で、万物が改まる時期。秋雨前線が現れ、冷たい空気を運んできます。

○末侯 禾乃登(こくものすなわちみのる)

 9月2日頃。田に稲が実り、稲の先が重くなって穂を垂らす時期です。昔は襲来してくる台風に警戒する時期でもあり、祭りで収穫の無事を祈りました。

処暑の食べ物

 処暑の頃においしい食べ物は次の通りです。

○すだち

新鮮なすだち(写真はイメージ)【写真:写真AC】
新鮮なすだち(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ライムのような酸味のある香りが特徴。昔は果汁を酢のように利用していたことから「酢橘(すだちばな)」と呼ばれ、それが「すだち」となったといわれています。徳島県が生産地として有名です。

○サンマ

サンマの塩焼き(写真はイメージ)【写真:写真AC】
サンマの塩焼き(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 初水揚げのニュースが入ってくる頃です。近年は不漁が続き、高級魚となりつつありますが、秋の到来を感じます。秋にとれる刀のような形をした魚ということから「秋刀魚」と書いたり、地域によっては「佐伊羅魚(サイラ)」と呼んだりすることも。

○柿

現在はたくさんの品種がある柿(写真はイメージ)【写真:写真AC】
現在はたくさんの品種がある柿(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 日本では古くから食べられ、平安時代の文献にも登場する果物。本来は渋柿だったのが、鎌倉時代(13世紀頃)に渋みのない甘柿が発見され、江戸時代になるとたくさんの品種が生まれました。甘柿の主な品種としては現在、「富有(ふゆう)」「次郎」「筆柿」などがあります。

○ブドウ

日本では生で食べることが多いブドウ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
日本では生で食べることが多いブドウ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ブドウは世界的に栽培の歴史が古く、ワインの原料にもなるなど親しまれています。日本では生で食べることが多く、皮の色味によって黄緑系、赤系、黒系が。色の違いはアントシアニンという色素の蓄積によるものです。

○ナス

みずみずしいナス(写真はイメージ)【写真:写真AC】
みずみずしいナス(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「秋ナスは嫁に食わすな」との言い伝えは、おいしいから食べさせたくないのではなく、水分が多いナスを涼しくなってきた頃に食べると体が冷えてしまうので、その気遣いという説もあります。

○サツマイモ

サツマイモの収穫(写真はイメージ)【写真:写真AC】
サツマイモの収穫(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 品種によって差はありますが、「鳴門金時」などの主なサツマイモの収穫が本格化します。収穫後に数か月ほど貯蔵すると、水分が抜けておいしくなるでしょう。

【参考】
「365日を豊かに過ごす 日本の四季、二十四節気、七十二候」(宝島社)
「にっぽんの七十二候」(エイ出版社、エイはきへんに「世」)
「絵で楽しむ 日本人として知っておきたい二十四節気と七十二候」水野久美書(KADOKAWA)
「日本のしきたりがまるごとわかる本」新谷尚紀監修(晋遊舎)
国立天文台「暦Wiki」七十二候
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FBCB7BDBDC6F3B8F5.html

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu