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夏休み、孤立する「ヤングケアラー」 介入しても大丈夫? 周囲の大人はどうすれば

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼 一夫

ヤングケアラーは“よくできた子”に見られやすい 医師が動いた実例

公認心理師の小林鮎奈さん【写真:Hint-Pot編集部】
公認心理師の小林鮎奈さん【写真:Hint-Pot編集部】

 もちろん、その子どもからSOSのサインが出ていたなら、より踏み込んだ働きかけを検討してもいいかもしれません。「大変なところがあるんだったら、大人が手伝ってあげることも必要だと思います」と小林さんは続けました。

「もしもの場合は、ちょっと相談してみたらという提案はしていただいても十分よろしいかと思いますね」と大和さん。学校の先生やスクールカウンセラー、子ども家庭支援センターや役所の子ども支援課を頼ったり、医師の力を借りたりする方法もあります。

 やってはいけないのは、声をかける大人が子どもの意思を確認しないまま、一方的に解決を図ろうとすることです。「第三者の強制的な介入は家庭内の不和をもたらす可能性が大きいです。すごく慎重に取り扱わないといけないことなので、個人的には介入しないほうがいいと思います」と、大和さんは力を込めました。

 ところで、おかしいなと思っても、ヤングケアラーかどうか見分けがつかないかもしれません。大和さんによると、ヤングケアラーは“よくできた子”に見られやすいといいます。

 ある日、大和さんの病院に小学生の姉妹を連れた母親がやってきました。診察は多動性障がいの妹に対してでしたが、大和さんは診察中ずっと静かに聞いている姉が気になりました。

「下の子が騒ぐなどして目立つのですが、私からすると、たとえば11歳や10歳で、まるでお母さんかのようにそこに座って黙って見ていられるというのは、すごく違和感があったんです」

 診察が終わり、母と妹が外に出ると、大和さんは姉に声をかけました。

「『お姉ちゃんも何か話したいこととか悩みとかありますよね?』と聞きました。『何がだとは言わないけど』って聞いたら、小さな声で『はい』って言ったんですよね。すぐお母さんを呼んで『お母さん。私は元気に走り回っている子よりも、ここでおとなしく聞いているお姉ちゃんのほうがよほど心配です』と言って、その日の午後にもう1回来てもらったら、お姉ちゃんは大泣きで診察室に入ってきましたね」

親にとって子どもは“戦力” 見過ごされがちなヤングケアラー

子どもからのSOSを見逃さないために(画像はイメージ)【画像:イラストAC】
子どもからのSOSを見逃さないために(画像はイメージ)【画像:イラストAC】

 姉は日常的に妹の面倒を見ていたヤングケアラーでした。

「共働きなので、お姉ちゃんが妹の迎えに行って、帰ってきておやつを食べさせて、お着替えさせて、お母さんの帰りまで相手をする。夜になると、また妹が暴れるので『お姉ちゃん、一緒に風呂入ってあげて』ということになる。自分のケアをしている時間はないですよね」

 母は気づかなかったといいます。

「わざと気づかなかったわけじゃなくて、『お姉ちゃんはいい子だから放っておいても大丈夫だと思った』と言うんですよね。でも、放っておいても大丈夫な子どもはまずいないです」

 その後は、病院に通院してもらいながらケアをしています。

 親によって子どもは“戦力”で、手放したくないという思いもあります。だからこそ、ヤングケアラーであることが見過ごされる原因になるのでしょう。

 迎える夏休みは、子どもたちにとって“年相応の青春を送る”かけがえのない機会のひとつです。

 小林さんは「ひとりで悩まないでほしいですね。私も、ひとりで頑張らなきゃいけないんだと思った時期がけっこうつらかったので、ひとりじゃないよって思ってほしいし、そのためにはやっぱり出会ってつながりたいなって思うので相談してほしいですね」と呼びかけています。

※この記事は、「Hint-Pot」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼 一夫)