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発売から2年 旅前のワクワク感を思い出してほしい 地域創生の思いも込められた「旅くじ」の今

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著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

「旅くじ」を立ち上げたメンバーのひとり、Peach Aviation株式会社事業戦略企画室ブランド企画部の山崎彩さん【写真提供:Peach Aviation株式会社】
「旅くじ」を立ち上げたメンバーのひとり、Peach Aviation株式会社事業戦略企画室ブランド企画部の山崎彩さん【写真提供:Peach Aviation株式会社】

 コロナ禍で県をまたぐ移動や行動が制限され、旅行や観光が止まっていた2021年8月。メディアをにぎわせたのが、ピンクに塗装された飛行機でおなじみの「Peach」を運航する、Peach Aviation株式会社が発売した「旅くじ」でした。1回5000円でガチャガチャを回すと、出てきたカプセルの中の紙に行き先が書かれており、運任せで旅に出かけることができるというもの。その「旅くじ」が今年3月、宿泊付きの「宿付き旅くじ」に進化。発売後すぐに完売する大反響となりました。「旅くじ」とはどういったものなのか、なぜ人気なのか。「旅くじ」を生み出した同社事業戦略企画室ブランド企画部の山崎彩さんに話を聞きました。(※「崎」はたつざき)

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「旅くじ」誕生のわけ コワーキングスペースの一角が始まり

「発売当初は、ちょうど4度目の緊急事態宣言が首都圏や大阪府で発令され、ほかの地域でも最初のまん延防止等重点措置が出されていた時期でした。みなさんの旅行マインドや、おそらく『旅行』という文字さえも頭の中からすっかりなくなっていた頃ではないでしょうか」

 当時をこう振り返る山崎さんは、「業界的にも大きな打撃を受けていたので、なんとか旅行に対するポジティブマインドを思い出してほしい、旅行でもう一度ワクワクしてほしい」という思いで「旅くじ」を企画したといいます。

 本社がある大阪府の心斎橋パルコには、会社オフィスのようなコワーキングスペースがあります。利用者に受け入れられるのか、その温度感を探るという意味で、コワーキングスペースの一角に「旅くじ」のカプセルトイを設置したのが始まりでした。

 開始前は「正直、売れるとは思っていなかった」といいます。しかし、販売を開始してみるとメディアで連日大きく取り上げられ、旅先は運しだいというドキドキ感もあって反響は大きかったそうです。

「最初は1日に1個売れたらいいかなという感じで小規模でスタートしたのですが、すぐにSNSで話題になったようで、初めの頃は若年層の方が多かった印象です。その後、メディアからの取材が増えたこともあり、世代を超えて認知度が一気に高まったように思います。やはり、旅行に行きたくてうずうずしていたお客様にマッチしたのだと思いました。なかには70歳のおばあちゃんもわざわざガチャを回しに足を運んでくださるなど、シニア層の方にもお楽しみいただけたようです」

「旅くじ」の仕組みと「Peach」からのミッションに秘められた思い

 コロナ禍を乗り越え、世代を超えて人気となった「旅くじ」。1回5000円で回せるガチャガチャですが、交換できるポイントは6000円以上とお得感もあります。空席連動型のチケット販売価格を導入している「Peach」では、航空券のセールを毎月開催しており、タイミングが合えばガチャガチャでゲットしたポイントで往復航空券を購入することも可能なのだとか。

「旅くじ」の醍醐味といえば、行き先がどこになるのかわからないこと。デジタルで行う「旅くじ」の案もあったそうですが、「あえてアナログのカプセルトイを採用した」と山崎さんは言います。その理由は、「カプセルが出てくるまでのドキドキワクワク、カプセルを開けるときのドキドキワクワクを通じて、旅に対するドキドキワクワクも感じてもらいたいから」だそう。

「沖縄が出たらいいなと思って来ました」という人や「運試しに来た」という人、「みんなで卒業旅行に行きたいのに行き先が決まらないから、くじに決めてもらおうとやってきた」という学生。なかには一度に何度もガチャガチャを回していく人もいるそうですが、ガチャガチャを回して旅先が決まる過程を楽しんでいる様子がうかがえるといいます。

「旅くじ」に入っている交換コードの有効期限は約半年。この期間に航空券を購入すれば、いつでも旅に出ることができます。時間に融通が利きやすい学生だけではなく、子育て世代や会社員、シニア層でも予定が立てやすいのが「旅くじ」の魅力です。

 さらなる人気の秘密は、カプセルの中に入っている旅先での「ミッション」です。旅先でのユニークな過ごし方をミッションとして指定することで、エンタメ性のある体験価値を付加することが狙いで、2022年度のグッドデザイン賞を受賞し、実際に「旅くじ」で旅行に出かけた旅行者から評判の仕掛けになっています。

「旅行からマインドが離れていると感じたことがきっかけでした。コロナ禍ですぐに旅行はできないので、だったら旅前の段階からもっとワクワクしてほしいなと思いました。なので、現地にある観光地の『○○に行ってきて!』というようなミッションは入っていません。『これはなんだろう?』『何をしたら、どこに行ったらいいんだろう?』と、ちょっと考えるような設計にすることで、旅前からリサーチしてワクワクできるようになっています」