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最近よく聞く「線状降水帯」って何? 天気図から読める梅雨前線との関係性とは
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前線とセットで発生しやすい 近年よく耳にする線状降水帯とは
梅雨前線に加えて近年、天気予報やニュースでよく耳にするようになったと感じているのが「線状降水帯」ではないでしょうか。線状降水帯とは、簡単に言えば、雨を降らせる積乱雲が線状に複数連なり、それらが一か所に長く停滞することで局地的な豪雨をもたらすことです。
梅雨前線付近の大気下層では、前線の南側を沿うように大陸から流れ込む空気と、高気圧の縁を回る空気がぶつかります。これらの空気は非常に大量の水蒸気を含んでいるため、積乱雲が次々に発生します。加えて、上空に寒気が流入した場合はさらに大気の状態が不安定になり、積乱雲が猛烈に発達します。猛烈に発達した積乱雲は上空の風の影響で線状に並び、この下では強い降水域となっているため線状降水帯と呼ばれています。
このように線状降水帯が形成・維持される過程を「バックビルディング型形成」と呼んでおり、線状降水帯が発生すると大雨災害の危険度が急激に高まります。
これは2020年7月、警戒レベル5となる大雨特別警報が発令された令和2年7月豪雨のときの3時間降水量(左)と危険度分布(右)です。この期間に線状降水帯は比較的長い時間、断続的に九州地方で多数発生しました。
“線状の降水域”は梅雨前線の周辺で比較的よくできます。前線が移動したり風向きや風の強さが少し変わると、移動したり消えてなくなることが多いです。しかし、梅雨前線が停滞し温かく湿った空気が同じ場所に流入し続けると、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列を成し、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞(線状降水帯が発生)することで大雨になります。
線状降水帯の予想はなぜ難しいのでしょうか。それは、発生メカニズムがすべて解明されていないことや大気の状況を把握する観測データが十分ではないこと、さらに予想のための予報モデルに課題があることが挙げられます。よって、現在の観測・予想技術ではいつどこで線状降水帯が発生し、どのくらいの期間継続するのかを事前に正確に予想することはできないのです。
近年、毎年のように甚大な災害を引き起こし、予測が難しい線状降水帯に備えるためには、情報の活用と日頃の準備が必要になります。十分な備えと対策が大切です。
まずは、住んでいる地域や自宅のハザードマップを確認してください。近年の風水害の浸水による被害状況はハザードマップの情報とほぼ一致しています。自身の状況を確認したうえで、気象台が出す情報を参考にしながら自治体が発令する避難情報に速やかに従ってください。事前の準備と対策、心がまえが、自身の命と家族の命を守ることにつながります。
気象庁では、昨年(2022年)から線状降水帯の予測情報を発表しています。これは線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いことが予想された場合に、半日程度前から呼びかけています。この情報は心がまえを一段高めていただくことを目的としており、この呼びかけだけで避難行動を取るのではなく、ほかの大雨に関する情報と併せて活用することが大切です。この情報が出たときは、大雨災害に対する危機感を持ち、ハザードマップや避難所・避難経路の確認等を行いましょう。
熊本県生まれ。高校生のときに気象予報士を志すも、大学受験に失敗し、フリーターに。しかし、「一生やりたい仕事ってなんだろう?」と一念発起し、福岡大学経済学部に入学。1年生のときから再び、気象予報士を目指して勉強をスタートさせる。4年生の3月、8回目の試験でようやく合格し、見事、気象予報士の夢を実現させた。
(Hint-Pot編集部)