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負担しかない相続した土地を手放せる可能性も 「相続土地国庫帰属制度」とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:永 滋康

相続したものの、活用できないまま放置された土地(写真はイメージ)【写真提供:写真AC】
相続したものの、活用できないまま放置された土地(写真はイメージ)【写真提供:写真AC】

 大きな台風が通り過ぎたあと、空き家となった家の一部がはがれ、その破片が近くの家を傷つける。空き家や空き地が増え、地域の景観が変わる。また、空き地を利活用しようとしても、所有者不明や所有者と連絡がつかずに活用できない……。近年、そんな話を地方では耳にすることが増えています。問題を解決するため、今年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度」。どんな制度なのか、弁護士法人 永 総合法律事務所の永 滋康弁護士に話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

2023年4月にスタートした新制度「相続土地国庫帰属制度」とは

「相続土地国庫帰属制度」(以下「本制度」)とは、相続や遺贈により土地の所有権を取得した者が負担金の支払いと引き換えに、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度のことをいいます。

 制度ができた発端は、「地方を中心とした、国民の土地所有の意識や積極的な土地活用のニーズの低下がある」と永弁護士は分析。とくに、進学や就職を機に地方を離れた人にとって、「相続により望まずして取得した、活用しにくい田舎の土地管理の負担感が増し、これを手放したいと考える人が増加していました」と話します。

 しかし、土地の所有権放棄が簡単に認められない状況から、「土地の管理を事実上、放棄することが横行し、その結果、所有者不明土地が大量に発生。これらの土地の管理不全化が発生する状況に至っていました」と指摘します。

 実際に国土交通省が実施した「土地に関する国民の意識調査(平成30年版土地白書)」によると、土地所有について「負担を感じたことがある」または「感じると思う」人が約42%。法務省が令和2年に実施した調査においても、土地を所有している世帯の約20%が、土地の所有権を手放す仕組みの利用を希望している結果が出ました。

「相続をきっかけに、期せずして親から田舎の土地を取得した人のなかには、積極的にその土地を利用するつもりがない人もいます。また、活用できない土地にもかかわらず、将来にわたって管理責任のみを負い続けなければならないケースも多いです。一定の限度を設けつつ、土地管理の責任や負担からの解放を可能にする制度の必要性がありました」

 一方で、制限なく土地の所有権を国庫に帰属させることは、国に膨大な管理コストを転嫁することになるうえ、所有者が自身の土地を適切に管理しなくなるといった、モラルハザードを招く恐れがあると、永弁護士は指摘。

「この制度は、相続などで取得した土地のうち、一定の要件を満たす土地のみが対象になります。単に要件を満たすだけでなく、法務大臣が承認することではじめて、土地所有権が国庫に帰属するのを認められるのです」と、永弁護士は説明します。

「相続土地国庫帰属制度」を活用できる条件とは?

 では、どんな土地が「一定の要件を満たす土地」となり、また、制度を活用できる人の条件はどのようなものなのでしょうか。

 本制度(本法第2条3項各号、同第5条1項各号)によると、国庫帰属が認められる土地については、「『通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する土地』を類型化し、これに該当する土地については国庫帰属を認めていません」といいます。つまり、どんな土地でもこの制度を活用して国庫帰属できるわけではなく、認められない土地があるとのこと。それが次の1と2に該当する土地です。

1. 申請できない土地
○建物がある土地
○担保権または使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
○通路など他人による使用が予定される土地(通路となっている土地や墓地、境内地、水道用地・用悪水路・ため池などのある土地)
○特定有害物質により汚染されている土地
○境界が明らかではない土地やその他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地

2. 国庫帰属の承認ができない土地
○崖がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの
○土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上にある土地
○除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下にある土地
○隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理または処分をすることができない土地
○その他、通常の管理または処分をするにあたり過分の費用または労力を要する土地

 しかし、これらの類型に該当しない土地であれば、利活用する見通しに関係なく、国として国庫帰属を承認しなければならないそうです。

「承認申請をすることができる者は、『相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限られます)により土地の所有権を取得した相続人のみ』(本法第2条)と定められています。したがって、自分の意思で購入した土地については、本制度を活用することはできません」

 また、例えば兄弟など複数人で相続し、土地が共有財産となっている場合には、「共有者全員で申請する必要がある」ため、注意が必要だといいます。